ヤナセの芝浦工場の広告塔が、関西方面から上京する人々のランドマークになっていたことをご存じですか。
この広告塔は、戦争中、軍部からの供出要請に伴い解体されましたが、鉄道からだけでなく、東京湾の海上からもよく見え、夜釣りになどに出掛けた人々が、海上でも唯一の頼りになっていて再建の要望が多かったそうです。因みにこの搭の高さは75尺(約22.5m)、ヤナセの文字は6尺(約1.8m)4方、上に乗せてある自動車の型幅は約9尺(約2.7m)余りでした。
あのグルグル回しのヤナセの広告塔は東京の入口に当たる品川の名物でもあったので、関西方面から汽車で上京する人々が、あの広告塔が車中で目につくと、東京が近づいたという目印にもなって、たまらなく懐かしかったので、是非また、あの広告塔を建ててくれといってきている者もあるくらいである。
(出典:『日本自動車社史と梁瀬長太郎』より)