ヤナセがボディ塗装のパイオニアであったことをご存知ですか?
GM社とデュポンが共同開発したDUCOというスプレーガンを使用した吹付け方式による速乾性ペイントに関心を持ったヤナセはGM社に塗装技師の派遣を要請、従来のブラシを使用した方式に比べ格段に効率性の高いこの新方式を採用します。これに伴い塗装業に関する取締規則が新たに設けられヤナセの芝浦工場は許可第1号になりました。
以下は創業当初の塗装に関する苦労話です。
一番大きな問題は塗装であった。その当時の有名な美術家で、蔵前工大の先生であった六角紫水氏を迎え、静岡の東照宮から漆工を借りてきて漆の研究を始めたが、静岡の漆は太陽の直射でヒビが入り、持続性に乏しく、職人も乗客も漆にかぶれて失敗に終わった。アメリカのデュポン社でデュコ塗料が開発されたのが大正8年頃であった。
(出典:梁瀬次郎著『轍』第1巻より)