芝浦の旧VW工場が廃材を利用して建設されたことをご存知ですか?
VW社からは代理権付与の条件として、サービス工場の整備を求められましたが、当時、建設資材は国の統制下にありヤナセ独自で調達することは困難でした。 梁瀬長太郎会長が荏原製作所の畠山一清社長と旧知の仲であったことから、戦争で被災した工場の鉄骨を譲り受けVW工場を建設、代理権獲得に成功したのです。以下は梁瀬次郎名誉会長の記憶に残っている両氏の会話です。
畠山一清翁は父に「ヤナセさん、あなたは偉いと言うか、向こう見ずと言うか、わからないが、人の造ったものが良いものと信じて販売されている。とても私にはそんな冒険は出来ませんよ」、父はすぐに「畠山さん、あなたこそもっと偉い。 売れるかわからないものに土地を買い、工場を建て、機械材料を購入し、多くの人を雇い、生産を開始されるが、出来た商品が売れなかったらどうなさるのですか」と笑いながら返事をした。
(出典:梁瀬次郎著『私の70年より』より抜粋)