芝浦本社周辺が花街だったことをご存知ですか?
戦前、芝浦は芸者が200人も働く有名な花柳界でした。ヤナセの前には雅叙園本店があり、料亭も数多くあったようですが、現在残っているのは牡丹のみ、当時の面影を残す建物は検番(芸妓の取次事務所)だった協働会館のみとなっています。
戦時中は一億国民一致団結が呼びかけられ、花柳界といえども例外は認められず、ほとんど女性ばかりの500名近い集団で芝浦一丁目防護団が結成され、団長には梁瀬次郎工場長が任命されました。以下は軍の査閲の際のエピソードです。
そんなある日、小隊長格の名物芸者中葉(なかば)姐さん(当時50歳を超えていたと思う)が、整列をさせた隊員(ほとんどが芸者衆、女中さん)に「気をつけ」の号令の後、「番号」というところを緊張のあまりか黄色い声を一層張り上げて「お勘定」といってしまい、査閲官をはじめ居合わせた全員が笑い転げ、このため防火演習は中止になったことがあった。当時をふり返ってみて懐かしく微笑ましい出来事であった。
(出典:梁瀬次郎著『じゃんけんぽん』より)