弓をひくヘラクレス像が、褌(ふんどし)を巻かれていたことをご存知ですか?
ヤナセスピリットの象徴ともいえるヘラクレス像は大正時代に梁瀬長太郎社長が購入したものですが、終戦後、日本橋本社を接収した進駐軍のアメリカの片田舎の郵便局長が、婦人のお客さまに裸の男の像があるのは失礼ということで腰のまわりに布を巻きつけてしまったそうです。
こうしているうちに昭和24年春の頃、この軍事郵便局のチーフとして転任してきた新任仕官が、フランス人であったために、このブールデルの彫塑の六尺褌を見て、この立派な芸術品に、こんな馬鹿げた真似をするものではないといって、部下のGIに命じてこの六尺褌を取り去らしめてしまったのである。このおかげで以前のフランス芸術に蘇って、現在もヘラクレスの神様は弓を引いた姿でいる有様である。
(出典:『日本自動車史と梁瀬長太郎氏』より)