ヤナセに外交官出身の重役がいたことをご存知ですか?
その方は青木節一氏。
戦前、国際連盟ジュネーブ本部に勤務し満州事変後のリットン調査団の一員として活躍、日本の連盟脱退後は国際文化振興会(国際交流基金の母体)を設立した人物です。ヤナセでは外交官時代に培った人脈と交渉力でVWやボルボの輸入権やプリンスの販売権獲得等に多大な貢献をされました。敗戦後、青木氏は日本の将来を悲観して奥さんが経営する熱海の和菓子屋の奥の炬燵でくすぶっていました。心配した奥さんは、甘党で饅頭を買いにたびたび店を訪れていた梁瀬社長に外に連れ出すことを依頼します。
道すがら、コーヒを飲みながら話をしているうち、感じが次第次第にお爺さんでなくなってきた。特に戦時中の政治外交の話になると、青年の如く顔に輝きが出てくる。また、次の週末、まんじゅうを食べに熱海にいった。そのうちまんじゅうよりも青木さんというその老人の方が好きになってきてしまった。
数回目に「どうです、会社へ来ませんか」ときりだしてみた。
(出典:「轍」第2号より)