ヤナセトップが語る クルマのある人生

「伝統と革新」それがヤナセ

 ヤナセは1915年の創業以来、海外の優れたクルマを日本の顧客の元へと届け続けてきた。新車販売台数は累計200万台あまり。ビュイック、キャデラックに始まり、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、アウディ、BMWなどの個性あふれる名車は、日本人に豊かなカーライフをもたらしてきた。自動車を取り巻く環境が大きく変わる中、ヤナセは今後どう進化し、何を守っていくのか。吉田多孝社長に話を聞いた。
(取材・撮影 YOMIURI BRAND STUDIO)

1台ごとに綿密データ、300拠点でケア

ヤナセでクルマを買うと、他のディーラーとどう違うのでしょうか。

 ヤナセではクルマをつくっていません。ヤナセは、輸入車販売に長年携わってきただけに、これまでのサービス技術の蓄積があります。約2600人のアフターセールススタッフ(板金・塗装を担うBPスタッフ約200人、国家1級小型自動車整備士約200人を含む)が、クルマの隅々まで手厚くケアする体制を整えています。メルセデス・ベンツはサービス技術のコンテストを開催していますが、各部門でヤナセの社員が毎回上位を占めています。日本代表として出場した世界大会で3位に入賞した女性整備士もいます。
 ヤナセは、全国に300拠点を超えるネットワークを展開しています。ドライブ中に万が一、事故や故障などトラブルに遭われても、お買い上げいただいた店舗と同じサービスを近くの店舗で気軽に受けられます。他のディーラーでも修理は受けられますが、ヤナセにはクルマがどこで買われたというだけではなく、日々接しているメカニックたちが残した修理についての履歴データや、クルマごとで微妙に異なる細かな特性についての記録があります。これを活用することで出先であっても、お客様のクルマに最適なサービスが提供できるのです。

ライフスタイルに「ベストの1台」提案

クルマ選びでも差はありますか。

 結婚や出産、お子さんの独立など家族の形が変われば、乗るクルマが変わることもあるでしょう。販売の現場では連日、若手からベテランまで参加した検討会を開き、一人ひとりのお客様に合ったクルマを提案するにはどうすればよいのかについて、議論を交わしています。
 クルマは嗜好(しこう)品です。お客様の中には、今お乗りのクルマに少し飽きたので、次に買うときは別のブランドにしたいという方もいらっしゃるかもしれません。ヤナセは現在、8ブランドを扱っています。お客様のご要望に応じて、様々なクルマを紹介しています。

ヤナセの伝統が生きているのですね。

 ただ、それは、強みでもあり弱みでもあります。ヤナセには100年を超える創業以来の歴史があります。ヤナセというだけで、高級輸入車を販売している会社だとご理解いただけることは、私たちの強みです。
 ですが、そこにあぐらをかいていてはいけません。世の中は刻々と変わっています。歴史のある会社といっても世の中に合わせた進化を怠ると、老舗企業というだけで先細りになってしまいます。

ベンツ、BMW…レンタカーも魅力

自動車業界も若者のクルマ離れや、いわゆるCASEとして示される次世代自動車の登場など大きく変わろうとしています。
※CASE Connected(ネットでつながる)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェア)、Electric(電動化)

 日本の(軽自動車を除く)新車販売市場は年約300万台規模ですが、輸入車のシェアは10%近くで推移しています。国産車とは違う味付けのクルマがほしいという要望は根強く、輸入車が伸びる余地はまだまだあると思います。とはいえ、日本の人口も減っていますし、対策は必要です。
 クルマ離れが顕著なのは大都市圏です。駐車場代などクルマの維持費が高いことが一因でしょう。一方で、クルマが全く運転されていないわけではなく、レンタカーなどは活発に利用されています。
 ヤナセは2015 年、ニッポンレンタカーと提携して、「ヤナセ プレミアムカー レンタル」というサービス名で、輸入車のレンタカー事業を始め、2017年から全国で展開しています。狭い街中ではなく広々とした旅先で、輸入車のドライブを味わいたいという方から好評です。都心部では、今月はメルセデス・ベンツ、来月はBMWなどと、様々なクルマを楽しみながら乗り換えている方がいらっしゃいます。
 レンタカーという機会を活用し、輸入車のファンを増やしていきたいと考えています。

「クルマってやっぱり楽しい!」を広めたい

クルマの魅力をどう伝えていきますか。

 車検や修理などで年間70万台のクルマをお預かりしていますが、かなり古いクルマを大事に乗り続けられている方がいらっしゃることに気づかされます。2018年に「ヤナセ クラシックカー センター」をオープンし、ヤナセが扱ってきたクルマだけでなく、世界の古い名車を修理できるようにしました。
 現在のクルマはコンピューターで故障箇所を解析していますが、古いクルマは音や感触も頼りに、手作業で直さないといけません。「ヤナセならどんなクルマでも直してくれる」とお客様から信頼されるように、技術の伝承をはかっていきます。
 ヨーロッパなどでは、クラシックカーを使った競技会や、みんなでクラシックカーを走らせるイベントなどがたびたび開かれています。日本でもこうしたクルマを楽しむ文化を広めていきたいです。

ヤナセと顧客の付き合いも変わるのでしょうか。

 お客様との関係性を強化し、ライフスタイルに応じたクルマを提案していくことが大切だということは、これからも変わりません。もちろん、物理的、または、精神的にも深くお客様の懐に入り込みすぎるとわずらわしいと思われるだけで、さじ加減はますます大切になってきています。
 一方で、どんなクルマなのかはインターネットで詳しく調べ、店舗に来るのは最後に買うと決めたときだけというようなお客様が増えているのは事実です。認定中古車ではすでに始めていますが、ネットを使ったクルマの販売は避けて通れない課題だと認識しています。ヤナセの親会社である伊藤忠商事とも協力し、ノウハウの研究を進めていきます。

「ヤナセと輸入車と私」
吉田社長が語るクルマ人生

 2018年6月からヤナセを率いる吉田社長は、根っからのクルマ好きで、自動車ビジネスに長年携わってきた。その人物像に迫った。

出会いは「あれはビートルじゃけえ」

どんな子どもでしたか。

 広島県出身なのですが、4~5歳の頃「あれは〇〇じゃけぇ」などと通りかかるクルマの車名をよく言い当てるような子どもでした。近所の友だちの家に見たことがないクルマがあったのですが、家の方がフォルクスワーゲンのビートルだと教えてくれました。自宅近くにあったヤナセのショウルームでも、同じクルマが展示されているのを見つけて驚いたことを今でもよく覚えています。これが私の輸入車との出会いでした。

商社時代からクルマの仕事一筋

ヤナセに入る前にいた伊藤忠商事ではどのような仕事をしてきましたか。

 クルマ関連の仕事に長く携わってきました。米デトロイトの駐在時代は、クルマ関連で新規事業を考えろといわれ、様々な自動車メーカーや自動車部品会社と交渉していました。1994年からは伊藤忠が出資したカリフォルニアにある電気自動車メーカーに出向したのですが、思ったようにクルマが売れず、資金繰りでとても苦労しました。
 国内に戻ってからも、自動車や建設機械、産業機械などのビジネスに関わっていました。

休日に走らせるベンツE200

これまで乗ってきたクルマは。

 就職したらすぐクルマを買いました。子どもが生まれるまでは、2ドアのハードトップ車なども乗っていました。
 デトロイトではフルサイズのアメリカ車に乗っていたのですが、カリフォルニアに移ってからは、仕事が厳しい状況で、気分転換をしようとメルセデス・ベンツに替えてみたのです。当時はクルマの運転が貴重なストレス解消の時間になっていました。
 その後、南アフリカに移ってからは、仕事の関係でフォードやマツダにも乗りましたし、妻の専用車としてBMWも買いました。
 現在乗っているのは、メルセデス・ベンツのE200です。休みの日には気分転換を兼ねちょこちょこ走らせています。

クルマの運転で生活に潤いを

クルマのどこに魅力を感じますか。

 すべての輸入車がそうとは限りませんが、ヤナセで扱っているメルセデス・ベンツやBMW、アウディなどは高速道路で運転しているときの安定感が魅力です。国産車も居住性はすばらしいですが、輸入車はドアが分厚い分、体をしっかり守ってくれているという安心感を得られます。
 技術が進めば、自動運転を好む人もいるでしょうが、自分で運転したいという人は依然として残るのではないでしょうか。日常生活から切り離され、操作できる喜びを感じられるからです。そうした生活に潤いを与えてくれる存在がクルマだと私は感じています。

吉田多孝(よしだ・かずたか)

1981年伊藤忠商事入社。
常務執行役員や取締役常務執行役員を務めた。
2018年6月からヤナセ社長。1958年生まれ。

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