


井上 和明

車は機械的な部分だけではなく、電子化、さらにはIT連携と、日々"進化"しています。ヤナセのメカニックはこのような先進的な技術に対応すべく、メーカー主催の研修やトレーニングに加え、ヤナセ独自の技術知識検定制度などを通じて、幅広い技術・知識を習得しています。
メカニックの仕事のなかでも、お客さまの愛車のコンディションが悪くなったとき、その原因を突き止める故障診断が私の主な役割です。故障診断はまず症状を再現するところから始まります。しかし車とはとてもデリケートなもので、その時々の状況で色々な影響を受けるため、ヒアリングしていた通りの症状が出ないことも多々あります。その際には『どのようなとき』に『どのような場所』で『どのような状態で』など、発生状況を詳しくお聞きして、できる限りお客さまが愛車に乗られているシーンを再現し、テストを実施します。それでも症状がでない場合、その症状と関連するシステムを調べ、さらに今までの経験と想像力をはたらかせて可能性のある不具合箇所を絞り込んでいきます。
どんな故障に関しても諦めることなく、やれることはすべてやり、答えを見つけ出す。お客さまの立場になって考え、最善を尽くすことをモットーに、安心して愛車に乗っていただけるよう日々仕事に取り組んでいます。
ヤナセは100年という長い歴史のなかで多くのお客さまに車をお届けしてきました。ですので、時には私が生まれるよりも前に製造された車の整備依頼を承ることがあります。以前、メルセデス・ベンツのW111というクラシックカーを大切に乗られているお客さまがいらっしゃいました。オイル漏れがあり「リヤアクスルのオーバーホールをして欲しい」とのご依頼でした。リヤアクスルとは非常に大きなパーツですので、多くのスタッフの手を借りながら作業し、ユニット担当の部門にオーバーホールの依頼をしました。大変な作業でしたが、ピカピカになったリヤアクスルを取付てお車をお渡ししたときのお客さまの笑顔を見て、すべてが報われた気持ちになりました。
このとき、40年以上前の車でも修理することができるというヤナセの技術力を体感するとともに、この技術力を自分たちが受け継いでいかなければならないという強い使命を感じました。このような経験から得られる想いは、ヤナセの技術部門の人間なら等しく持つものではないかと思います。
整備の仕事をしていると、重整備や難しい診断などで行き詰まってしまいどのようにすれば解決できるのか、その糸口さえつかめないという状況が必ずでてきます。私も仕事をしてきたなかでそのような“困難”にぶつかったことが何回もあります。そんなときこそ一人で考え込まず、ヤナセという大きなチームの仲間とともに取り組むことで解決してきました。
毎年、メルセデス・ベンツ正規販売店のみが参加する『テックマスターズジャパン』という大会がメーカーにより開催されていますが、各部門の優勝者はすべてヤナセのメカニックという年もあります。しかしヤナセのメカニックにはこのような個人の技術力だけではなく、チームとして助け合い、先輩から知識と経験を受け継ぐということを100年の間、大切にして積み重ねてきました。それがヤナセの財産のひとつであり、誇りであり、強みなのです。私も一人のメカニックとして自分自身の技術を磨くことは当然のことながら、チームヤナセのイチ員として多くの後輩たちへ伝えていきたいと思っています。
「クルマはつくらない。クルマのある人生を作っている。」というヤナセのコーポレートスローガンにあるように、クルマというものはお客さまの大切な人生の一部なのだと思います。クルマの先にあるお客さまの立場になり整備をすること、そして日々進化する技術をしっかりと習得して、更なるプロフェッショナルな整備士を目指すことで快適なカーライフをお手伝い出来ればと思っています。
株式会社ヤナセ 横浜港北支店
メルセデス・ベンツ横浜港北 サービス課
メカニック
井上 和明
国家一級整備士 / メルセデス・ベンツ国際認定故障診断士
メルセデス・ベンツの『テックマスターズ ジャパン2016』で優勝するなど、個人として高い技術と多くの知識を持ちながら、ヤナセのメカニックを一つのチームとして考え、助け合うこと、技術と経験を伝えていくことの大切さこそがヤナセの強みなのだと感じています。
(2016年 8月)