満天の星を探すドライブに出かけよう

大切な人と素敵な思い出を作りたいとき、はたまた日常の慌ただしさを忘れたいとき。夜空に浮かぶ美しい星が彩る神秘的な光景は格別の癒しを与えてくれます。寒い季節だからこそドライブに出かけて、星空を眺めてみてはいかがでしょうか。冬の天体観測のコツや注意点について、広島県の呉市かまがり天体観測館の山根弘也さんにお伺いしました。

  • 2023年02月09日
  • 文:渡瀬基樹
  • 写真:小林岳夫、佐藤亮太、呉市かまがり天体観測館
呉市かまがり天体観測館館長の山根弘也さんと、国内最大級の42cmマクストフ望遠鏡。館内にはほかに20cm屈折望遠鏡、35cm反射望遠鏡なども備える。利用料金は大人200円、小人100円。

「冬は星がきれい」は勘違い!?

冬は星がきれいな季節だとよくいわれますが、本当にそうなのでしょうか。確かに空気が乾燥しているため、水蒸気の量が少なく、透明度が高いというメリットはあります。

また、冬は星がきらきらしてきれいといわれることもあります。これは星自体の明るさが変化しているのではなく、空気の温度変化で密度が変わって光が屈折するため、ゆらゆらしているように見えるものです。望遠鏡で見るとゆらゆらして、むしろ見にくいことがわかると思います。

では、どうして冬の星はきれいだと思いがちなのでしょうか。それは、ほかの季節と比べて明るい星が多く、夜空が賑やかであることが理由の1つでしょう。形を憶えやすい星座も多いため、初めて天体観測する方にもおすすめの季節です。日没時間の関係で、夏よりも早い時間から観察できるというメリットもあります。

天体観測に適する環境は、まず月が出ていない晴れの日であること。2023年の冬は2月20日(月)、3月22日(水)が新月となっていますので、もしこの日が晴れていれば、ぜひドライブに出かけてみてはいかがでしょうか。

赤い光のライトがなければ、懐中電灯などに赤いセロファンを貼って作り出すこともできる。最近は、スマートフォンやタブレットの画面を赤一色で表示するアプリなどもリリースされている。
冬の天体観測は防寒着や手袋のほか、耳当てやカイロなども必須。風の対策もしっかり準備しておきたい。夏は虫除けが必要だ。
コンパスや星座早見盤、双眼鏡もあると便利。事前に、当日の星座の位置を予習しておくと、スムーズに見つけられる。

街の明かりが干渉しない暗い場所を探そう

天体観測に向いている場所は、とにかく「暗いところ」です。近くに光があると、その眩しさに星の光が負けてしまいます。月の明かりだけでなく、東京など大都市の近くは街の明かりが空に反射するため、星の観察には適していません。

周囲に山のない開けた高原などは、遮るものがなく住んでいる人も少ないためおすすめです。島や半島の先端など周囲を海に囲まれた場所も、光を発しない広大な空間に囲まれているため、天体観測に向いています。

クルマを使った天体観測のメリットは、星をきれいに見られる場所へとスムーズに移動できること。気象庁などが発表している、衛星画像や雨雲レーダーを見れば、どのあたりが晴れているかという予測も立てやすいでしょう。

観察場所付近で注意したいのが、クルマが発する光です。人の眼は、暗さに慣れる(暗順応)まで20分程度かかるのですが、途中で明るい光を見てしまうとリセットされてしまいます。人気の観測スポットでは、他の人の迷惑となるので、ヘッドライトや室内灯のつけっぱなしは厳禁です。

暗い場所では他のクルマや事故にも気をつけてください。足元を照らすための最低限の照明が必要な場合は、暗順応を邪魔しにくい「赤い光」を発するライトを用意すると便利です。普段、人がいない山の中や海沿いでは、静かにしていると野生の動物が出現することもありますので気をつけましょう。

「冬の大三角」と「冬のダイヤモンド」を見つけよう

それでは、初めての方でも探しやすい冬の星をご紹介します。一般的に「冬の星座」とは、午後8時頃に南の方角に見える星座のことを指します。左のイラストが、2023年2月中旬の午後8時頃に、東京で見られる星座です。

まず見つけてほしいのはオリオン座です。2等星が3つならんだ3つ星を、2つの1等星と2つの2等星が四角く囲むかたちは、ご存じの方も多いでしょう。このうちの赤い1等星「ベテルギウス」を起点に、東の方角にあるこいぬ座の「プロキオン」、南南東のおおいぬ座「シリウス」を結んだものが「冬の大三角」です。

冬の星座を代表する三角形が見つかったら、次は六角形の「冬のダイヤモンド」です。プロキオンとシリウス、そしてオリオン座のもう1つの1等星である青白い「リゲル」を下3辺として、おうし座の「アルデバラン」、ぎょしゃ座の「カペラ」、ふたご座の「ポルックス」を結んでみてください。

これらが見つかれば、冬の星座の基本はマスターしたといえるでしょう。いずれも1等星なので、初めての方でも見つけやすいと思います。

オリオン座(右側)の左上にある赤いベテルギウスと、プロキオン・シリウスがきれいな三角形を作っている「冬の大三角」。
オリオンの三つ星の下にある「小三つ星」付近に位置する「オリオン星雲」は、肉眼で見える星雲の中でもっとも明るいものの1つ。双眼鏡があれば、より観察しやすい。

双眼鏡があればもっと楽しめる

間違えやすいのが、2022年の末に約2年ぶりに地球へと接近した火星です。赤く輝く火星をきれいに見られるチャンスですが、ちょうど冬のダイヤモンドの中に位置しているので、ほかの星と間違えないように注意してください。

双眼鏡をお持ちの場合は、オリオン座の三つ星の下に位置する「オリオン星雲」や、三つ星から右方向への延長線上にある、おうし座の「すばる(プレアデス星団)」を探してみて下さい。環境のいい場所では、たくさんの星が集まっている「冬の天の川」も見られます。

さらに2月、かつ水平線や地平線が見える高台などに限定されますが、りゅうこつ座の「カノープス」が見えるかもしれません。緯度の高い北日本では見られませんが、日本では南側の地域(関東では房総半島の先端など)で、地平すれすれの低空に位置する姿を見ることができます。

カノープスは本来、白色の1等星ですが、日本では大気の影響から赤っぽく見えます。そのため古来中国では七福神の「寿老人」の星とされ、カノープスを見たものは長生きできるという、縁起のいい星といわれています。ドライブの目的としてぴったりの星といえるかもしれませんね。

星空鑑賞におすすめの
ドライブスポット

城ヶ島灯台公園

神奈川県三浦市三崎町城ヶ島689-8

三浦半島の先端に位置する城ヶ島は、三方が海に囲まれており、南の空を観察するには絶好の場所。関東屈指の星空観察スポットとなっている。有料駐車場が近くにある、西側の城ヶ島灯台付近がおすすめ。有名な馬の背洞門なども近いが、未舗装路が多いため、夜間の移動は注意が必要。

呉市かまがり天体観測館

広島県呉市蒲刈町大浦8160
休み:毎週月・火曜日、年末年始
http://kamaten.net

毎週土曜日(19:30~21:00)には定例観望会を開催中。晴れた月のない日は、スター広場から満天の星を堪能できる。隣接する、日本の渚100選に選ばれたビーチからも観察が可能だ。