アウディというブランドが持つ世界観とアートがあるショウルーム
ショウルームとは本来、お客さまとスタッフとの談笑の場であり、
また、お客さまが気になられている車両をご検討いただく場であり、
点検などでお待ちいただく時間を快適に過ごしていただくための場でもあります。
「本当にそれだけでいいのか」ヤナセオートモーティブ代表の峯田昭次が目指すのは
「クルマがなくても、覗いてみたくなるような情報発信場所としてのショウルーム」
アウディというブランドの持つ世界観と峯田が目指すショウルームのあり方とは。
- 2021年10月22日
- 文:宮崎正行
- 写真:高柳 健
お客さまにご来店いただくためのきっかけ作りに
「ショウルームに、コンテンポラリーアートを展示したい」。
そんな試みを、アウディの販売を手掛ける、ヤナセオートモーティブが実践している。今回はその真意と、ヤナセオートモーティブ代表の峯田が考えるこれからのショウルームの理想のあり方についてお話しを聞きました。
──アートをショウルームに展示するということ自体、とても新鮮です。
「もともとアウディにはブランドとしてアートやデザインとの親和性があります。東京支店(Audi芝浦)ショウルームが完成したのは約10年前の2012年ですが、その当時、アウディのイメージ作りは新型A8デビューのワールドプレミアを、デザインの世界的イベント「デザイン・マイアミ」やアートフェア「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ」で行うなど、とてもアートとの関係を意識したものでした。ここ数年はそういう動きは控えめに映っているかもしれませんが、アートとの親和性には土壌があることが後押ししてくれました」。
──アウディ・ブランドのイメージ作りはもちろんですが、ショウルームに別の目的ができるようで興味深い取り組みですね。
「はい、既存のお客さまはもちろん、まだアウディショウルームにいらしたことのない方にも来ていただく働きかけはできないものか、というのがそのきっかけです。アート作品の展示を東京支店でやってみよう、というのはその施策のひとつなんです。現在は増田将大さんの作品を展示させていただいていますが、その前には藤崎了一さんの作品をご紹介させていただきました。これからもいろんなアーティストさんにご協力いただけるようにしていきたいと思っています」。
自分たちがアウディ・ブランドを創っていく
──販売店側から積極的に仕掛けていく企画というのは、他にもあるのでしょうか?
「『MMM(メトロポリタン・マーケット・ミーティング)』というものがあります。首都圏に店舗を構えるアウディのディーラーが横断的に集まって、“私たちにできることは何か”を話し合う場です。このような新しいトライもアウディらしさのひとつだと思っています。その試みがいま中部エリアにも波及しつつありますので、今後はもしかしたら全国的な動きになるかもしれません」
──販売促進についてもブランディングについても、かなり積極的なことが伝わってきます。
「個人的には、それらのアピールをもっと強めていってもいいと思っていますし、それが自分たちのアイデアによって可能にしていることもアウディの自由さ、魅力の大事なポイントだと感じています。『お客さまが求めているものは何か?』を常に考えることによって生まれてくるアイデアはたくさんあります」
──大切なのはお客さまが楽しみにしてくださること、ということですね。
「そうです。何を発信すれば興味を持っていただけるか、です。それらのことに真剣に取り組むことで、ブランドと販売店の両方をビルドしていることを実感することができますし、それが活力になることも噛み締めています。自分たちでブランドを作っていくのって、楽しいですから(笑)」
ショウルームでジャズコンサートを開催しよう
──そういう日々のトライが結果的に、アウディのファッショナブルなイメージにもつながっていくのですね。
「以前はこのショウルームでジャズコンサートを開催したこともありました。東京支店は、日没の時間がなかなかいい雰囲気なんですね。そんなステキな時間をジャズでも聴きながら、お客さまにくつろいでいただけたら……というのがその趣旨でした。ショウルームの展示車のほとんどをバックヤードに戻し、空いた店内にライブスペースを作りました。もちろん来場していただいたお客さまにはたいへん喜んでいただけたので、最高にやりがいがありました」。
──しかし、それがダイレクトに販売につながっていくわけではありませんよね?
「もちろんです。こうした活動は営業活動ではなく、お客さまとコミュニケーションをとらせていただける機会だと思っています。一方でお客さまにも、ショウルームは『クルマを買うだけの場所ではありません』ということを肌で感じていただきたいんです。そのための“仕掛け”をショウルームに散りばめたいと考えています」。
──今後もそのようなライブイベントは企画されていますか。
「じつは昨年の夏も著名アーティストをお呼びしてボサノヴァのライブを開催しようと動いていたのですが、なにぶんコロナ禍で実施できませんでした。しかし今後もイベントでお客さまをお呼びしたい気持ちに変わりはありません。クルマだけではない、何か。そして顔が見えるコミュニケーション。それらの実現のために積極的に企画していきたいと思います」
──確かに「車の用事以外の用事」を作ることの意味が見えてきます。
「個々のセールスではなく、すべてのお客さまをスタッフ全員でお迎えをする──そんな感覚を大事にしたい。『あのお店に行ったら何か面白いものが見られるかも』という、シンプルな興味をそそることができる場所でありたいと思っています。その上で、ヤナセオートモーティブの存在感をアップしたい、アウディの魅力をもっと発信していきたい、そんな風に考えています。そのためには、お客さまよりも先にまずセールスを巻き込んでいかないとモチベーションは上がりません」
ショウルームを通じてお客さまと“ストーリー”を共有したい
──クルマという大きな買い物をしていただく前段として、お客さまと共有できる「何か」を発信していく、ということですね。
「そのことが結果的に、お客さま同士の口コミとなって伝わっていくことも大切にしたいんです。これからはコミュニケーションの深さも求められていく時代だと思っています。たとえばこの『スクイーザー』と呼ばれるレモン絞り器は、フィリップ・スタルクの名作ですが、デザインやファッションに興味のあるお客さまは、“フィリップ・スタルクのあるショウルーム”と認識していただけるはずです。一方で、デザインやアートに興味のないお客さまからしても、直感的に“スタイリッシュな感じ”は伝わるのではないでしょうか。それがアウディに求められるものと一致させることがショウルームの役割でもあると信じています」。
──まさに“共感”ですね。
「センスを通じた共感意識の構築のためには、ブックシェルフに置いてある雑誌のラインアップだけでも、お客さまに何かを伝えようとするアイテムとして重要です。気は抜けません」。
──これまでのショウルームの価値観をどんどん覆してくれそうな、楽しい空間になりそうですね。
「アウディの格好良さって、デザインの良さなのではないか。さらにそれは、どこかアートに通じるものがあるのではないか。ひとつのモビリティとして見たときのフォルムの美しさ、ここまで優れたプロダクトデザインはもはやコンテンポラリーアートの領域に入っているのでは、と。アートとデザインの間に、もはや根本的な違いはないのかもしれません。そんな感覚をお客さまと共有することができれば、それほど嬉しいことはありませんから」。
デジタルの時代だから、ショウルームが大切に
──アートが乾いた心を少しでも潤わせてくれれば、ステキですね。
「コンテンポラリーアートの世界を牽引するドイツと、カルチャーを共有する同国から発信されるアウディ。そのふたつから生まれ出るサムシングを表現してもらおうと今回、若手のアーティストである増田将大さんにお願いして作品を創っていただきました。現在、東京支店で展示していますのでぜひご覧ください」。
デザインに何ができるか、アートが何をもたらしてくれるか──それらの潜在的なパワーをショウルームという“持ち場”で発揮させようとする峯田。およそセールスらしからぬ感性でカスタマーを惹きつける新しいディーラーの、次のパフォーマンスに期待したい。
「新しい時代に対応していくこと。既成概念を変えていくこと。それはアウディというクルマをセールスする上で、これからますます重要になってくると思います。“次”を考えることができるマインドをスタッフと共有しながら、新しいアウディを創っていければ嬉しいですね」。
2012年末、ヤナセ新社屋の竣工に伴い、アウディ最大級のショールームに生まれ変わりました。天井高7m、展示台数12台の広々としたショウルームで、魅力のアウディ・ラインアップをご案内させていただきます。
- 住所
- 東京都港区芝浦1-6-38
- TEL
- 03-5440-5391