スキャバルとメルセデス・マイバッハ Sクラスに共通する上質さとは
世界のセレブリティが指名する最高峰服地ブランドであるスキャバル。その名門が構える予約制オーダーサロンは、賑やかな路面店ではなく、静謐な時間が流れる隠れ家のごとき佇まい。紳士服を知り尽くしたスタッフとのざっくばらんな会話にて、贅を凝らした至極の一着が供される。快適な着心地に始まりエレガントな存在へと集約される本格派のビスポーク・スーツは、メルセデス・マイバッハ Sクラスに共通する真にラグジュアリーなエッセンスだ。
- 2022年01月28日
- 文:長谷川剛
- 写真:前田晃(MAETTICO)



スキャバルとマイバッハ、世界を代表するラグジュアリーブランドの共通点
スーツは男子の一張羅。そのスーツのクオリティを決定づけるのが仕立てであり、デザインであり、そして素材だ。
創業1938年のスキャバルは、世界でも最高峰とされる本格服地ブランドのひとつだ。世界の王族やセレブリティ、それに政財界の重鎮が、スキャバルの服地を用いたスーツを愛用する。カシミアに匹敵する超細番手のSuper200'Sやシルクにモヘアなど、プレシャスな服地をどこよりも多彩にリリースしている名門である。さらなる輝きを求めたプラチナや24金を織り込んだした超ハイエンド服地などは、スキャバルだけの別格素材だと言われている。
他方、モビリティシーンにおけるメルセデス・ベンツの存在はいわばオーダースーツ界におけるスキャバルのようなもの。ことマイバッハに関しては、スキャバルの中でも最高級に君臨するこだわりの素材ということになるだろうか。周知のとおりマイバッハはダイムラーに見出されたヴィルヘルム・マイバッハが、1909年に創立したエンジン製造会社を源流とする超高級ブランドだ。
両者に通じるのは最高峰と称されるための不断の努力と時代に合わせた革新、そして職人と呼ばれる熟練の手作業によるフィニッシュワーク。
あらゆるものがコモディティ化していく中で、「自分だけの」そして「熟練の手作業による」逸品へのニーズが再び増しつつある今、メルセデスオーナーにはぜひスキャバルの着心地を、スキャバルのスーツを愛用されているなら最新のメルセデスを体感いただきたい。

自分だけの一着を思うままに創るという愉悦
ともに世界のトップクラスを目指し進化を続けるスキャバルとマイバッハだが、その上質さは「自分だけの空間」という点でも似ている。スキャバルは本来は服地商であるが、さらなる上質を極めるためビスポークサービスを充実させつつある。それが東京・京橋にしつらえられたオーダーメイド専用の空間、スキャバル・ハウスだ。嬉しいのが、こちらは完全予約制のため、スーツ作りに浸れる隠れ家のような一室であること。スーツを仕立てられたことがある方ならご承知だろうが、満足した一着を作り上げるには、ボディサイズなどのスペックや服地の数量だけでなく、立ち姿と座り姿のどちらを重視するか、落ち着いた感じを演出したいのか、それとも若々しさを強調したいのか、そもそもどのようなオケージョンでの着用を想定しているのかなどを話し合うこと(be spoken=ビスポーク)が不可欠。ましてや何もかもがコンビニエントな現代で、時間をかけてスーツを仕立てることは、それ自体が特別な時間だ。マイバッハの後部座席に座るかの如く、スーツを作る喜びに浸っていただきたい。




肌触りこそ、上質さを知る上での全ての基準だ
車とスーツ。製品としての趣はまるで違いながら、その上質を語る上で重要視されるのが触れた感じ、触感だ。例えばスキャバルにおいては、先述したようにハイエンドな素材も得意とするものの、その本質はベーシックなウール素材にこそ表れている。スキャバルは通常、公的機関が設定する基準より高い品質の原毛、つまりより細くてしなやかなウール素材を選び出し使用している。たとえば他社では「Super110~120'S」となる18.00~17.50ミクロンの細糸でも、スキャバルでは「Super100'S」として展開する場合がある。というのも繊維の細さだけでなく、繊維自体の長さや不純物の有無もクオリティに大きく関わるため、スキャバルでは総合的かつ厳格にクラス分けを行うというのだ。ゆえに昨今では見慣れた「Super100'S」であっても、同社のそれは非常に柔軟で精緻な光沢を放つ上級な服地なのである。


素材や仕立てに贅を尽くして完璧となる
最高級服地のラインアップは、スキャバル・ハウスにおけるアドバンテージの一角にすぎない。仕立てに関しても国内屈指のファクトリーを用意しており、素材の持ち味を十分に生かした至高の一着を作り出す体制が取られている。スーツを内側から支える芯地や副資材についても吟味を尽くし、一着に対しなんと330を超える細かい作業を加え、自然な着心地と成熟した貫録を実現している。完璧なピスポークスーツがもたらす卓越のフィーリングは、高級車の“仕立ての良さ”に通じるエッセンスだ。車両外装におけるフェンダーとボンネットのチリ合わせや、レザーシートに施すステッチングの精巧さなどの集積が高級車を高級たらしめるように、本格スーツもまた特殊技巧の集合体と言える存在なのである。


誰とも同じではないことこそが真のラグジュアリー
ストレスなく安全かつ快適さも約束されたクルマは理想の贅沢品と言えるだろう。マイバッハこそはラグジュアリーの手法を駆使し完成した究極の高級車だ。では、そんなクルマのステアリングを握る際はどういったスタイルがベストなのか。本当の意味で着心地良く、自分自身のすべてにフィットした衣服が必要であることは言うまでもない。スキャバルを纏うことで、ドライビングライフはより成熟したものへと進化する。
