Mercedes-Benz C-Class Impression
新型Cクラスは乗用車界のスタンダードモデル
パワートレインの進化や最新の安全運転システムの導入、電子デバイスやテレマティクスに代表される機能性の向上など、メルセデス・ベンツ新型Cクラスに与えられたトピックは数多い。ボディのプロポーションは流麗で、スポーティかつラグジュアリティなデザインが内外装に与えられており、コックピットにワイドな横型、ダッシュボード中央に縦型の大型ディスプレイが並ぶインパクトも強烈だ。しかしCクラスの最大の魅力は、快適なドライブを安心して楽しめる、車としての完成度の高さにこそある。
- 2022年2月22日
- 文:西川 淳
- 写真:高柳 健
スポーティなプロポーションとSクラス級のラグジュアリティを融合
1982年に登場した「190シリーズ」が「Cクラス」の原点だ。93年に「Cクラス」となって現在へと至っている。その間、メルセデス・ベンツブランドはもちろん、セグメントを、否、乗用車シーンをあらゆる面でリードする存在として圧倒的な人気を集め続けてきた。乗用車界のスタンダードモデルと言っていい。
2021年に登場した最新モデルは190から数えて6代目、Cクラスとしては5代目となる。注目すべきは、フラッグシップモデルであるSクラス譲りのデザインクォリティや安全性能を惜しみなく搭載したことのほか、特にインテリアには最新のデジタルテクノロジーを数多く積み込んだこと、さらにはパワートレーンをすべて電動化(ISG=マイルドハイブリッド)したこと、などであろう。
スタイリングは、ロングノーズのいかにもCクラスらしいスポーティなプロポーションに加えて、フロントマスクやディテールの仕上げにはSクラス級のラグジュアリィさが備わっている。ラインやエッジを大幅に減らすことでピュアな官能美を体現した。シンプルさの追求は最新ラグジュアリィの潮流でもある。横から見れば車体の前後を貫く「キャットウォークライン」によって躍動感を効果的に演出しており、見た目のダイナミックな印象は明らかに増した。
ウルトラハイビーム付きDIGITALライトは、一度その性能を夜間に味わってしまうと、もう他のヘッドライトでは物足りなくて仕方なくなるほどに強力だ。このヘッドライトの機能だけでも欲しくなってしまう。特に街灯の少ないエリアで威力を発揮する。
ボディサイズそのものは全幅が10mmの拡幅に収められたのに対して、全長は65mm、ホイールベースも25mm延伸され、特に後席スペースの拡充に当てられている。サイズアップにもかかわらずCクラスらしい取り回しの良さは健在。そのうえで居住性の向上をみた。ユーザーにとっては喜ばしい限りであろう。
出足の鋭さとトルクの厚みをアシストするISG
新型Cクラスに搭載されるパワートレインは、全てが何らかの方式で電動化されている。現時点で日本市場に導入されているパワートレイン2機種、すなわち新型の1.5ℓ直4ガソリンターボエンジン(C 200用)と2ℓ直4クリーンディーゼルターボエンジン(C 220 d用)にはいずれも48VのISGが備わった。これは発電機(ジェネレーター)とスターターを兼ねた電気モーター(15kW)をエンジンとトランスミッションの間に挟み込むことで、より効率的で快適なパフォーマンスを得るという、最新のシステムだ。
滑らかなエンジン始動はもとより、走り出しても即座に新しいパワートレインであることを実感できる。従来型に比べて明らかに出足が鋭く、その後の常用域におけるトルクの厚みもはっきりと頼もしい。エンジン、電気モーター共に強力になっているからだ。中間加速も力強さが増しており、非常に扱いやすい。これは電気モーターをエンジンとトランスミッションとの間に組み込んだことで、より効率的にアシストできるようになったことに依るところが大きい。回生ブレーキやコースティングのスムースさにも大いに寄与している。
高速走行時の直進安定性にも予想通り素晴らしいものがあった。安定感、安心感ではほとんどEクラスレベルだと言ってよく、細かく制御された後輪操舵がよく効いている。ボディサイズが少し大きくなったこともあってか、新型CクラスのライバルはひょっとしてEクラスではないか、と思ったほど。
コクピットとダッシュボード上に大型のディスプレイを装備
ドアを開けると、そこはCクラス独特の世界観が広がっている。上下二つのエリアに分けられたウィング形状のダッシュボードやモニターの配置方法などにはSクラスからのデザイン的な影響をみて取れるが、Cクラスの方が見るからにスポーティだ。ドライバーの目の前には12.3インチの大型コクピットディスプレイが装備されている。自立型としたことで、ダッシュボードやインテリアトリムから浮かんでいるようにも見え、モダンなインテリアの雰囲気をいっそう強調した。
最新世代のデザインとしたステアリングホイールは筆者のお気に入りの一つだ。主だった操作をステアリング上でほとんどできてしまうという機能性の高さもさることながら、多くの機能を破綻なく、直感的に使えるように配置したデザインセンスが気に入っている。なるほどその手続きには慣れてもらうほかないけれど、一度自分のモノにしたならば使い勝手に困ることはない。そのうえ「Hi、Mercedes」で始めるボイスコントロールの精度も上がってきた。あの手この手でクルマとの対話も進む世の中になってきたというわけだ。
ちなみに新型Cクラスのステアリングホイールには新たに静電容量式センサーを用いたリムパッドを採用している。触っているだけでもハンズフリーの検知機能が効くため、従来のトルクセンサー方式に比べて利便性が高まった。個人的にはアンビエントライトの充実も嬉しい進化だった。64色ものカラー選択ができるようになったほかマルチカラー変化にも対応している。ドライビング時の気分に即した色味を演出するカラーセラピー機能としてもっと活用されていい。
安全運転支援システムや運転支援機能は全面的に高機能化
Sクラスから採用されている最新の安全運転支援システム用ハードウェアが、新型Cクラスにも導入された。安全なドライブはモデルのヒエラルキーに関係なく、すべてのメルセデス・ベンツにおいて最も重要なファクターであるという宣言だと言っていい。
「アクティブステアリングアシスト」は360度カメラシステムを使用したことで、車線認識や車線中央保持の能力が格段に向上した。「アクティブブレーキアシスト」は転回時に歩行者や自転車、自動車などと衝突する可能性がある場合に警告、自動ブレーキをかけるよう進化している。「アクティブレーンキーピングアシスト」は芝などの路肩も検知できるようになり、感度も3段階で調整できるようになった。また「アクティブブラインドスポットアシスト」では停止時に後方から迫る物体を検知する。こんな具合に多くの運転支援機能においてその守備範囲が広められ、高機能化されているのだ。
Dセグメント初(※1)となるAR(拡張現実)ナビゲーション(※2)の採用にも注目したい。これは現実の景色がナビゲーションの指示画面に映し出され、そこに直接、矢印などが反映されることで、より直感的に進むべき方向を定めることができるというもの。上級クラス用の装備が惜しげなく展開されたというわけだ。そのほか、声や指紋による生体認証機能の付加も、その一環だ。
- ※12021年5月時点。メルセデス・ベンツ日本調べ(メーカー純正オプションとして)。欧州委員会の分類概念に基づいた輸入車Dセグメント
- ※2全モデルにオプション装備
車としての基本的な動的ポテンシャルの高さがCクラスの最大の魅力
機能から実際のインプレッションまで語るべきポイントが非常に多い、というのが、新型Cクラス(セダン)を都合2000km以上試してみた率直な感想だ。なかでもデジタルコクピットに代表される最新テクノロジーの数々は、ひとたびその機能性の高さに慣れてしまうと、もう他のモデルには乗りたくなくなるほど印象深い。
けれども新型Cクラス最大の魅力はやはり、車としての体幹の強さ=基本的な動的ポテンシャルの高さにあると言っていい。車の基本である「走る・曲がる・停まる」が真っ当にハイレベルだ。それゆえ初めて操った瞬間から慣れ親しんだパートナー感を得ることができるし、快適なドライブを安心して楽しむことができるというものだ。それがあるからこそ、優れた運転支援や驚きのヘッドライト性能といった付加されたさまざまな機能の利便性を享受できるのだった。
メルセデス・ベンツCクラスは変革の時代にあって尚、パーソナルカーのスタンダードとしての魅力に磨きをかけてきた。今後の進化にも注目していきたい
- ※本記事の取材車両は下記オプションが装着されております。
- ベーシックパッケージ
- AMGライン
- レザーエクスクルーシブパッケージ
- メタリックペイント
- リアアクスルステアリング
- パノラミックスライディングルーフ(挟み込み防止機能付)