YANASE CLASSIC CAR CENTER
これからの100年もクルマと共にある人生を
「ヤナセクラシックカーセンター」を訪ねて
- 2021年04月20日
- 文:伊東和彦 Mobi-curators Labo.
- 写真:尾形和美
これまでの100年も、これからの100年も。ヤナセは、“人生を豊かにするクルマ”、“クルマと共にある人生”を提案していきます。
こうした人とクルマの関わり合いをスローガンに掲げるヤナセは、クルマに魅了される趣味人にとって、ひとつの究極のかたちともいえる、クラシックカー・オーナーにとっても強い味方でもある。ヤナセにおけるクラシックカーケアの本拠地である、「ヤナセクラシックカーセンター」を訪問し、同センター部長の片岡浩一氏と社長付の神埜雅弘氏の案内で施設内を取材した。
長い輸入車販売だから舞い込む相談
「ヤナセクラシックカーセンター」は、(株)ヤナセのグループ会社で、新車整備やボディ修理などを担当する、(株)ヤナセオートシステムズが2018年4月に新設した組織である。実は、この組織が作られる以前から、ヤナセとクラシックカーの繋がりは連綿と続いていたという。その繋がりとは、いかにも会社創業から一世紀を超える輸入車販売の歴史を持つ同社らしいものであった。顧客の中には、一台の車を長く愛用し、整備の際は必ず馴染みのヤナセに任せると決めているユーザーもめずらしくはない。
中でも最も顕著な例であるメルセデス・ベンツの場合、生産から20〜30年を経たヤングタイマーに分類される、クラシックカーの範疇に入るモデルの入庫も少なくない。また、かつて憧れた、あるいは想い出の詰まったモデルに再び乗りたいと、手を尽くして探し出し、入念な整備、あるいは新車同様に仕上げたいと希望されるユーザーもおられるとのことだ。こうした熱心な方々からの相談も少なからずあったのだという。
クラシックモデルであっても、日常的な整備ならどこの支店工場でも支障なくこなすことができるが、大規模な整備やレストアには、それなりの時間と設備も必要なため、ヤナセ自らがレストア事業については積極的に告知することはせず、“くちこみ”程度の規模でユーザーのあいだに浸透していったという。だが、近年、確実に高まりを見せるクラシックカー趣味の拡大を考慮して、2018年春に横浜ニューデポー(神奈川県横浜市)に、専門施設を設けて集中的に取り組むことになった。
新車のころを知っているスタッフが揃っている
「往年の名車をYANASE Qualityで蘇らせます。ヤナセクラシックカーセンターは、長年、輸入車に関わってきたヤナセに課せられた使命です」と、紹介資料に綴られているが、この言葉には、ヤナセのレストアに対する自信のほどが込められている。果たして、「ヤナセクラシックカーセンター」の設立が報じられてから、多数の問合わせが引きも切らないという。メルセデス・ベンツがほとんどだが、どのメーカーのモデルも対応し、顧客と担当者がじっくりと話し合い、作業に入るという。
2018年春に横浜ニューデポー(神奈川県横浜市)内に「ヤナセクラシックカーセンター」が開所した。同じ建屋の中で新車整備とクラシックモデルが整備を受けている。
レストア作業には熟達した人材の存在が欠かせないが、ここには、ヤナセ入社以来、メルセデス・ベンツの整備に長く携わってきた人材が揃っている。現在、11名のメカニックを擁しているが、60歳を超えた3名のベテランを筆頭にして、50歳代が中核を成し、30歳半ばの若手がこれに加わっている。片岡部長自身も1988年にメカニックとして入社しているので、まさに“ヤングタイマー”世代なのである。
「新車当時を知るベテランがレストアに当たるというのは、大きな強みです。そのベテランが会得してきた経験を若い人たちに伝承し、後継者を育てていくことでも、クラシックカーセンターは重要な役割になる」と片岡氏はいう。
これは部品供給についても同様で、「長年にわたって構築されていた、国内外に広がるネットワークがおおいに頼りになるし、貴重なパーツの発見情報さえも舞い込むことがある」という。神埜氏によれば、「年式やモデルによっては、リプロダクションパーツの割合も高まっているものの、概ね供給されている状態」だそうだ。
言うまでもなく、特殊工具やメーカーの技術資料、カタログなどの資料を所有していることも大きな強みになっている。
ヤナセクラシックカーセンターの設立に当たっては、ドイツの第三者認証機関、テュフ・ラインランド・ジャパン(株)より、クラシックカーガレージ認証を取得している。板金塗装を担当するのはヤナセ・ボディショップで、同所は以前にテュフによってボディショップ認証のプラチナ工場として認証されている。
レストア完了済み車の販売も
開所当時は顧客からの注文に応じるだけの活動であったが、現在では、主に全国のヤナセ系列ディーラーに下取りに入ったヤングタイマー各モデルの中から候補を厳選して入手。ヤナセクラシックカーセンターの在庫車として、完成車に仕上げて販売をしている。
この販売に関しては「乗って楽しむクラシックカー」のスローガンに則った独自の手法を用いている。前述したように、スタッフたちはヤングタイマーが新車であった当時の経験を持っていることから、各モデル固有の弱点さえも知り尽くしている。そうした弱点などについては、事前に、併設されたリビルド部門によって予防整備を実施して、故障を未然に防いでいる。たとえばトランスミッションでは、蓄積されたデータを元に弱点箇所を改修した、リビルト済みのものと交換し、それらの作業を含めた価格で販売をしている。
さらにクラシックカーセンター独自の保証もつけている。その作業内容は多岐にわたり、販売前に購入希望者に詳しく説明したうえで、作業に入るようになっている。この結果、よくいわれる「古いクルマは購入価格の他に相当額の整備代を用意しておく必要がある⋯」といった心配を払拭させている。もちろん、これをベースにユーザーの希望によって、さらに高度に仕上げることも可能だ。
取材した2021年2月末の時点では、販売予定のヤングタイマーが560SL(R107)、500SL(R129)のほか、Eクラス(W123とW124)、Cクラス(W201)など12台が在庫されていた。これらは入念な整備済みながらリーズナブルな価格で購入できることから、好評のようだ。ヤナセには高年式の中古車を扱うブランドスクエアがあるが、クラシックモデルについては、「クラシックカーセンターが独自に扱うので、お間違いのないように」とのことだ。そのためのショウルームが神奈川県横浜市鶴見区に新設された。
百聞は一見にしかず。ショウルームでクラシックモデルの“ヤナセクオリティー”をご覧になってはいかがだろうか。
ヤナセクラシックカーセンター
TEL:045-474-7856/FAX:045-471-1512
〒224-0044 神奈川県横浜市都筑区川向町1117
営業時間 9:30-18:00
定休日:日・月曜日、祝日、夏季、年末年始
https://yanase-classic.com
E-mail:yanase-classic@yanase.co.jp