メルセデス・ベンツセールスが語る歴代Cクラスの魅力とは

メルセデス・ベンツセールスが語る
歴代Cクラスの魅力とは

2021/9/2

7年ぶりとなるフルモデルチェンジを果たし、2021年6月に発表されたCクラス。今やメルセデス・ベンツの中核モデルとなるCクラスはいかに進化してきたか。
カーセールスの現場で長年Cクラスに携わってきたヤナセ文京支店の市来靖二郎と麻田光が、当時の実物カタログを眺めながら、モデル毎の思い出をふたりの販売エピソードを交えて振り返ります。

文 宮崎正行
写真 高柳 健
<画像提供協力>
メルセデス・ベンツ社、メルセデス・ベンツ日本株式会社

一冊のカタログから思い起こされるメモリー

クルマのカタログ。それらは、印刷用のインクによって種々の写真が最高に美しく表現された厚手コート紙によって編まれています。ブックストアでここまでハイクオリティな紙が用いられている雑誌を見ることはまずありません。あるとすれば、一部のアートブックか写真集、図鑑くらいのものでしょう。

そんな高級紙をふんだんに使って編まれたのが、ヤナセを訪ねてくれたお客さまに配布していたクルマのセールスカタログです。

こと今回は、メルセデス・ベンツ社の歴代Cクラスの過去カタログをすべて集めた上で、セールスに携わってきたおふたりにカタログのビジュアルから想起されるCクラスにまつわる思い出を忌憚なくお話ししてもらいました。

ヤナセ文京支店の支店長の市来/麻田
今回取材に答えてもらったのはヤナセ文京支店の支店長の市来さん(左)と麻田さん(右)。文京支店は2020年9月に東京都千代田区より移転したばかりの、メルセデス・ベンツの最新のC.Iを配備したショウルームを持つ。

190シリーズは革新的なニューモデルでした

──本日は、過去のCクラスのカタログを集めましたのでゆっくりとご覧ください。中にはきっと思い出深いカタログもいくつかあると思います。さて、さっそくですが支店長の市来さんにお伺いします。Cクラスとはどのタイミングで出会ったのでしょうか?

「私はCクラスに車名変更される前、メルセデスでは初めてのDセグメントモデルである190シリーズ(W201)の時からメルセデスには途切れずずっと関わっています。
その中でも特に思い出に残るモデルは? と問われれば、やはりCクラスの前身である190シリーズから受けたインパクトはかなり強かったです。いきなりCクラスの話ではないですが(笑)。
ヤナセに入社する前から私が思い描いていたメルセデスへのイメージが、190シリーズにはすべて詰まっているようには今でも感じています。メルセデスの外装デザインの方向性が、190シリーズからガラッと変わったことのインパクト、当時も今もそれが大きいですね。そんな190の革新的なエンジニアリングが、そのまま受け継がれているのが初代Cクラスである1993〜2000年式のW202だと思います」

市来靖二郎/株式会社ヤナセ文京支店(メルセデス・ベンツ文京)・支店長
市来靖二郎/株式会社ヤナセ文京支店(メルセデス・ベンツ文京)・支店長。セールスとして入社し、東京支店 目黒営業所(現在のヤナセ目黒支店)に配属。その後、都内の拠点の販売課長を歴任し、2021年4月に文京支店長に就任。

「小さな高級車」の先駆けになった190シリーズ

──おっしゃる通り190シリーズは長いメルセデスの歴史の中でも重要なモデルですし、その高い人気ゆえ12年ものあいだ生産が続けられました。ヤナセが国内初導入したのが1985年ですね。

「すでにデビューから36年も経過しているんですね。モデルイヤーが12年間という長期にわたったのも、2021年現在のハイペースなモデルサイクルを考えるとだいぶ長期戦だったと言えるかもしれません。
日本ではちょうどバブル期とタイミングが重なるので、高級車がたくさん売れた時期でもありました。190シリーズは“小ベンツ”なんて呼ばれ方もしていましたが、実際に買われるお客様はメルセデスブランドを信頼して購入に踏み切ってくれる硬派な方が多かったことをよく覚えています。売れ筋のグレードはシンプルで質実な190Eが圧倒的でした。
80年代は、それまでEクラスなどのミディアムサイズカーに乗られていたお客様が、もっとコンパクトなサイズのクルマが気になり始めた頃でもありました。いささかボディが大きくなりすぎてしまったんですね。でも……イメージにピッタリ来るものがない。そんな最中、好タイミングでデビューしたのが190シリーズです。『小さな高級車がほしい』というニーズにばっちりハマった格好で一気に人気モデルに成長しました」

オリジン・オブ・Cクラス、メルセデス190シリーズ
オリジン・オブ・Cクラス、メルセデス190シリーズ。小さな高級車の先駆けたるW201があってこそと言っても過言ではないCクラスの成功潭は、一見アンダーステイトメントに見えるこの質実なカタログから始まった。製造は1982〜1993年。

「小さな高級車」の先駆けになった190シリーズ_信号を待つ新しいCクラス(W202)
先を急ぐ街の雑踏は流れゆくもので、信号を待つ新しいCクラス(W202)だけがゆるぎない緊張感をたたえている──。インプレッシブなモノクロフォトをカタログ中面に大きく採用した、当時の制作スタッフの気概に思いを馳せる。製造は1993〜2000年。

「忘れられないのはウインカーレバーの感触です」(市来)

「そんな190シリーズのサクセスを100%受け継ぐかたちでCクラスはデビューしました。1993年のことです。型式も190シリーズの“W201”をそのまま進化させた“W202”となりました。人気だったワゴンボディも、このW202から新規でラインナップに加えられています。
メルセデスの流儀として、CクラスはDセグメント車だからアッパーなグレードよりもクオリティを落としていい……とはまったく考えていません。そのことは当時の車両の内外装やエクイップメントにもはっきり見て取ることができました。たとえばウインカーレバーは、わずかに“しなり”ながら操作するのが当時のメルセデス流。そのフィーリングはSクラスでもCクラスでも不変だったことを鮮明に覚えています」


──令和の今でこそ“コンパクトラグジュアリー”というようなフレーズで、小さな高級車というジャンルは当たり前なものとなりました。その点でもCクラスの果たした役割は大きいですね。
麻田さんはどのモデルからセールスに関わってらっしゃったのでしょうか?


「私は2007年から2014年まで生産された3代目Cクラス、いわゆるW204からになります。W204はデビュー当時2つのグレード、“エレガンス”“アバンギャルド”があったのですが、全体のセールスの9割以上が“アバンギャルド”だったことは記憶に新しいです」

Cクラスにおけるワゴンボディの存在感を際立たせた初代W202(S202)
Cクラスにおけるワゴンボディの存在感を際立たせた初代W202(S202)。2000年にフルモデルチェンジを果たしたW203(S203)、2代目ステーションワゴンもまた人気モデルとなってその後を継いだ。写真はC200コンプレッサー。2007年まで製造。

「Cクラスはますますアクティブ路線に!」(麻田)

「このグレードの圧倒的な人気の源は、そのフェイスデザインにあると思っています。エレガンスはフロントグリルの上にスリーポインテッドスターが載せられた旧来の“定型”を踏襲しているのに対し、アバンギャルドはグリルのセンターに大型のスリーポインテッドスターを堂々と掲げています。このアピールの強さがお客様のハートを掴んだことは間違いありませんね。
スポーツ性能の向上が著しかったのもW204の新しさだったと思います。コンセプトのブラッシュアップと新しいアピアランスが功を奏し、購入されるお客様の若返りが目立って増えていきました。それに合わせてセールスも好調だったので、“Cクラスはアクティブ”というイメージが定着していったのもW204でした。メルセデスの中でもCクラスを起点にニューテクノロジーが積極的に投入されていったのも、人気に拍車をかけたように思います」


──市来さんも麻田さんと同じようなお気持ちでしたか?


「とにかくアバンギャルドが大人気で、輸入が追いついていなかったのが忘れられません。アバンギャルドが履いているタイヤも、かつてのCクラスではありえなかったほどロープロファイル(低扁平率)なタイヤが採用されていましたが、スポーティなルックスも人気の一因だったのかもしれませんね。乗り心地をまったく犠牲にしていないところに、テクノロジーの進化をつぶさに感じました。
コンパクトカーというジャンルを離れてクラスレスなモデルになりつつあった、Cクラスの転換点のようなモデルがW204かもしれません」

麻田光/株式会社ヤナセ文京支店(メルセデス・ベンツ文京)・販売課MB国際認定セールス・係長
麻田光/株式会社ヤナセ文京支店(メルセデス・ベンツ文京)・販売課MB国際認定セールス・係長。入社当時は世田谷支店に配属。その後神田支店に異動。神田支店の移転を機に文京支店に所属。

“いいもの”を売っている、というセールスマンのプライド

──市来さんは、紙のカタログというセールスアイテムについて何か思い出はありますか?


「入社当時に会社の先輩から、カタログの高額な原価や、なぜそれほど高価なカタログを作っているかを聞いたことがあります。だから気持ちを込めて大切に扱いなさい、と。とくにヤナセが製作していたカタログの質感に独特の高級感があったことは、セールスの現場にいる私の立場から見てもプライドを満たしてくれるところがありました。“いいもの”を扱っているんだ、という誇らしさですね」


──今まさにセールスの最前線にいる麻田さんから見ても、カタログというアイテムは重要なのでしょうか?


「とても大切です。ただし現在、カタログ自体が紙からデジタルに移行している真っ最中ですので、そのことに柔軟に対応していかないと、セールスツールとしての機能を十分に発揮できないと考えています。
カラーリングや装備の情報についてはタブレットの方が解説しやすい場合もあったりしますし、逆に紙の方が簡単なのにな……というシーンもたびたびあります。それぞれ一長一短ですが、今後はますますウェブでのコミュニケーションが当たり前になっていくんでしょうね。
ショールームに来ていただいた若いお客さまに、紙のカタログはありません、ってお伝えしても、そうですか、で済んでしまうのが現在です。そういったエピソードとともに、時代が急激に変わっていっている実感は私にもあります」

“フェイスやリヤまわりなどボディ各部の造形がW221のSクラスとの共通項がたいへん多かったW204
フェイスやリヤまわりなどボディ各部の造形がW221のSクラスとの共通項がたいへん多かったW204。フロントグリルのデザインにはスリーポインテッドの位置と大小で2種がラインナップされていた。製造は2007〜2014年。

“よりウェッジシェイプが効いたグラマラスなボディに進化したW205
よりウェッジシェイプが効いたグラマラスなボディに進化したW205。後期モデルでは車体構成パーツの半数近い6500点もの部品をリファインし、Cクラス史上もっとも大規模なフェイスリフトが施された。製造は2014〜2021年。

“2021年6月に発表された第5世代Cクラス(W206/S206)
2021年6月に発表された第5世代Cクラス(W206/S206)。先代モデルから全幅を10mm増に抑えつつ、全長を65mm伸ばしより伸びやかなフォルムに。エクステリアはメルセデスの「Sensual Purity」に基づき曲線を多用した彫刻的な面構成を採用している。

「肩の力がどんどん抜けていっている」(麻田)

──日本マーケットにおけるCクラスの位置付けには近年、何か変化が起きているんでしょうか?


「W204あたりまではまだ、C/E/Sクラスというカテゴリーが生きていたと個人的には思います。でもそれが2014年発売のW205、2021年発売の現行型W206と世代が新しくなるにつれて、明らかにあいまいになってきているように思います。
でもそれ自体はぜんぜん悪いことではなく、お客さまがクルマというビークルに求める機能と中身が時代とともに変容してきている、というだけではないでしょうか。結果的に、長年のメルセデスオーナー様がそれぞれのクラス間で往来することも普通なことになってきています。肩の力が抜けてきている、とでもいいますか。今の自分にフィットするクラスを無理せず自然に選ばれていることが最近感じることですね」

「肩の力がどんどん抜けていっている」(麻田)

「Cクラスはメルセデスのスタンダードになりつつある」(市来)

「W204の大胆な変化については、私もまったく同感です。じつは私、歴代Cクラスのすべてに乗っていたんです……所有者として。ですので、変化した部分と変わらなかった部分はしっかりと各モデルで感じてきました。
そんな私がW204に乗ったときに最初に感じたのは、『高すぎるこの完成度……これ以上、いったいどこを進化させていくのか?』ということ。そのくらい強い驚きとインパクトがあったことは今でも忘れられません。もう一生W204でいいんじゃないか! と。
W204は限定モデルが多く中身も充実していたので、お客さまからの引き合いはかなり多かったです。セールスの間で奪い合いになったことがちょっと懐かしいです(笑)」


──さらにW205、W206と変遷していく中で、ユーザーはもはやCクラスがメルセデスのラインナップの中でいちばん小さいモデルだったとは感じていないのかもしれませんね。


「本当にそうです。Cと名が付くモデルだけでも豊富なバリエーションとボディサイズがありますので、その中でも十分に迷える余地があります。
CクラスはもはやDセグメントのメルセデスではなく、むしろメルセデス全体のクラスレンジの中で“スタンダード”なモデルになりつつある……個人的にはそんな気が強くしています。Cクラスの根本にあるメルセデス流のエンジニアリングが歴代どのモデルにも等しく盛り込まれていること──そこにCクラスの本当の価値があるのかもしれませんね」

「Cクラスはメルセデスのスタンダードになりつつある」(市来)

株式会社ヤナセ文京支店

2020年9月に東京都千代田区より移転。ショウルームには大型LEDビジョンを配備し、納車専用ブースなど最新のメルセデス・ベンツ ショウルームのコンセプトを有しております。

住所:東京都文京区小石川1-21-3
TEL:03-3868-7211

株式会社ヤナセ文京支店
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