スマホで愛車をドラマチックに撮影する、たった3つの基本
まずは下の写真ボックスに収納されている写真をご覧ください。
これらの写真はすべてスマートフォンによるもの。加工は一般的な無料アプリ(アプリ内課金不使用)のみで、当然プロユースの機材やコンピュータソフトは使っていません。しかもこれらはすべて一般的スマートフォンの標準レンズのみを使用。つまり、少なくともここ3年以内に発売されたモデルであれば誰でも撮影可能な写真ばかりです。
今や最も身近なカメラといえば、スマートフォン。
ところがあまりにも身近な存在ゆえに、愛車との旅行やドライブの写真もついつい“記念写真”になってしまっている方も多いはず。そのスマートフォンのカメラで誰でも一度は愛車そのものや愛車との素敵な時間をイメージ通りに残したいと思ったことはありますよね。
ところがいざ撮影してみると、どうもうまく撮れないというのが現実ではないでしょうか。
でも足りていないのは、写真の基本とちょっとしたコツだったりするものです。
- ※今回使用するスマートフォンは単一機種として日本で最も普及している機種であるiPhone11。
このモデルは上位モデルに3つのレンズが付くことで話題になりましたが、ここではその他メーカーも標準採用する35mm換算で26〜28mmのメインのレンズでの撮り方を考えます。
- 2020年11月13日
- 写真:高柳健
- 構成・文:前田陽一郎
まずはグリッドラインの設定を
スマートフォンを購入したらまず設定したいのがカメラ機能のグリッドライン。デフォルトでは設定オフの場合が多いようですが、この機能はぜひオンに。
使用したiPhone11の場合は【設定】→【カメラ】→【グリッド】をオンにすることで、カメラ起動時に三分割のグリッドが画面に表示されます。このラインがすべての撮影のガイドになります。
こちらはiPhone8のグリッド画面。
実際に撮影に使用したiPhone11も同様のグリッドが使用されています。
構図の基本はたったの3つ!
上手に見える写真というのは、しばしば「安定感」と「躍動感」という2つの要素が練りこまれているものですが、
その基本構図というのは以外に簡単!ここでは応用しやすい1つのポイントと2つの構図を紹介します。
写真や絵画などあらゆるグラフィックの基本は水平にあります。もちろんスマホの撮影でもグリッドを頼りに水平と垂直を意識することが肝要です。壁にかかった額縁が少し曲がっていると気になりますよね、それは写真も同様なのです。
グリッドラインを見ると完全に垂直・水平基調の画面だと分かります。これがもっとも安定した画面と言えます。画面の中央からクルマをずらすことで、安定感と動きを出しました。
さらに!スマートフォンのレンズはおよそ28mm(35mm換算)クルマを横から撮影すると必ず歪みが出るので、5m以上離れて撮影することが歪みをなくすポイント。後はズーム機能で距離を調整すればOK。
これも水平・垂直のラインを意識した写真です。構図そのものはよくある写真ではありますが、後方のビル群のラインを整えることで安定感を作っています。
さらに!車両を右下、高層ビルを左上方に配置して、対角線の構図に。これも安定感と動きを両取りするポイントです。
構図の基本に三分割法という考え方があります。グリッドが一辺を3つに等分割されているのはそのためです。ただ難しく考えないで大丈夫。画面全体にうまく入れようとしないで、クルマは画面の1/3以下のボリューム(もしくはその逆)になるように撮ってみると、漫然と撮るよりも“キマった”構図になるはずです。
グリッドラインで見るとおよそ画面の1/3に要素が集中していますね。クルマは画面の1/9に配置することで、漫然とした写真にならないように配慮しています。
さらに!クルマ全体を見せないこともポイント。全体を見せないことで躍動感が生まれます。
上の写真同様に、およそ画面の下1/3に道路を入れ、車両は画面1/9に収まるように。
さらに!こちらは車両のノーズを切り、4で紹介しているように極端に低いアングルから撮ることで画面に動きを出しています。
日の丸構図は専門用語としても使われる構図で、日の丸のデザインのように画面中央に被写体を配置する構図のこと。前述の三分割法の真逆とも言える構図です。動きをあえて封印することで、撮りたいものや撮影者の狙いを明確にする効果があります。
完全な日の丸構図の例。ガードレールの真横のラインが白い車両と重なることで、さらにクルマを引き立てます。
さらに!濡れた路面がコンテナを映し出してシンメトリーな写真になりました。
画面中央にクルマを配置、下からのアングルで後方に続く天井のラインを強調し、トンネルの奥行きを出してみました。
さらに!車両のフロントにあえて光を当てないことで凄みのある顔つきを作っています。
さらにドラマチックな2つの演出
水平・垂直、三分割法、日の丸構図というのは一眼レフのような本格的カメラでも同様の基本です。
ただ、せっかくならスマートフォンならではの優位性を活かした写真に仕上げたいもの。
そこでポイントになるのが機動力と後加工のし易さです。
スマートフォンの最大の利点は扱いの手軽さ。ただそれだけについつい、いつもの目線で撮りがちです。しかもクルマはいざカメラを向けてみると意外に大きいものです。そのためちょっと背伸びをしたり、屈んだりする程度では画面に変化がつきません。思い切って地面からとか、頭よりも高い位置から撮ってみてください。
道路の白線の上にスマートフォンを置いて撮影。水平の地面に対して斜めに入るフェンスがスピード感を演出します。
さらに!雨の日でも平気で撮影できる最新のスマホだからこそ、こんな撮影ができるんですよね。
同じ位置から目線を変えてみました。ほぼ目線の高さから撮りましたがスマホのレンズ効果で実際以上に高い位置からに見えますね。
さらに!水平・垂直をあえて崩していますが、右上の角に向かって3本の白線が向かうことで画面にスピード感と安定感を与えています。
これも目線よりも少し高い位置くらいから撮影したものですが、クルマ全体を見せず、石畳を画面の主人公にして密度を出しています。
さらに!画面右上の白線の方向に合わせてタイヤの方向を合わせていることにお気づきでしょうか。動きに統一性をもたせることもポイントです。
実は3枚前の地面からの写真と構図もアングルも同じ写真です。
さらに!クルマの向きが変わるだけで、向かってくる迫力、走り去っていくスピード感と、印象が変わります。
スマートフォンの最高の特技が簡単に画像補正ができること。特に最近のモデルは撮影した後にピント(被写界深度)が調整できるものも多いようです。最新モデルでなくても無料アプリで十分ボケの調整はできますから、ぜひ試してみてください。
- ※使用アプリケーションは「Focus」
(iOS 11.0 以降。iPhone、iPad、および iPod touch に対応。)。
2017年に登場した定番のアプリケーションです。
アプリケーション内課金がありますが、基本機能はほぼ無料で使用可能です
地面からのスーパーローアングルで迫力を作りつつ、後方のビルを垂直線に見立てて安定感を出しています。
さらに!ハンドルを切り、ホイールの面を見せルことでクルマそのものに動きを作っています。
こちらは“手前ボケ”と呼ばれる手法。立体感を作るのに有効です。実はここまででご紹介した地面からのスパーローアングル写真も地面の“手前ボケ”写真です。
さらに!手前ボケは電柱や壁、人でもOK。画面手前に遮蔽物があり、その向こうにクルマが佇んでいるように撮れれば理想です。
いかがですか?それぞれのポイントはそれひとつだけで上手く撮れるわけではありませんが、それぞれを意識しながら撮影することで、記念写真ではない、ちょっとドラマチックな写真になるはずです。そんな写真が撮れるようになったら、次のドライブがきっと楽しくなるはずです。ぜひ実践してみてください。
今後もそのほかのテクニックなどにも触れていきたいと思いますので、お楽しみに。