INTERVIEW 桐島ローランドさん(マルチクリエイター)
メルセデスAMG EQS53の魅力は、最先端技術で作られた1%のアナログ感
桐島ローランドさんといえば、モデル、カメラマン、デジタルメディアクリエイター、起業家など多彩なキャリアと活動で知られる。特に2007年にパリ・ダカールラリーに二輪部門で挑戦・完走したこと、2013年の参議院議員選挙への出馬などは、桐島さんの無限のバイタリティを証明する出来事だった。現在はサイバーエージェント内のグループ会社、Cyber AIプロダクションの取締役という顔も持つ。そんな桐島さんが昨年8月に葉山で開業したカフェ「Felicity Café(フェリシティカフェ)」に伺い、メルセデスAMG EQS53 4MATIC+の試乗をお願いした。
- 2025年06月12日
- 構成・文:前田陽一郎
- 写真:高柳健



EQSを見るや「おお、いいデザインじゃないですか!」
Felicity Cafeがある場所は神奈川県の葉山の街道沿い、元は老舗のオートバイショップだった。
「『幸福商会』というショップで、僕はもちろん、二輪好きの間ではよく知られたお店です。ちょうど倉庫のような作りの物件を探していたところ、こちらの話を伺って。オートバイ好きとして縁を感じましたね」と桐島さん。ここ数年、デジタルを生業にしてきた反動か、あらためて対人間というビジネスの基本に立ち帰りたくなり、カフェをオープンさせたという。
取材をお願いした日は朝から近隣の方々をゲストに、カフェの2階を使ったピラティスを開催していた。「今日が初回だったんですけど、こうして人が集うきっかけを作っていく予定です。まずは地域の皆さんに使ってもらうところからはじめないとね」。
カフェの前に停まったメルセデスAMG EQS53 4MATIC+を見るや「おお、いいデザインじゃないですか!写真では何度も見てるけど、実車を見るのははじめてなんです。いいですね。僕は好きです」と桐島さん。
ひとしきりカフェのお客様の一人一人に声をかけると「さあ、海の方に走りに行きますか」。走り始めてすぐに、「さすがですね、これ。登録は2022年で、聞けば日本で発売されたメルセデス・ベンツとして初期の BEVですよね。それでここまでよくできているとは」との感想が。


「ガジェットではなくマシンですね。アナログな香りが残っている」
どこがよくできているか。「サスペンションの動き、ハンドルからの入力、ブレーキのあたり感、そして何よりも驚くのがアクセルレスポンスがガソリンエンジンのそれのような味付けになっていること」。これまでかなりの数のメーカーのEVに試乗し、実際に所有してきた桐島さんだが、メルセデスだけは縁がなかったという。
「このメルセデスAMG EQS53 4MATIC+は動力源こそ電気だけど、ドライバーが感じるフィーリングはこれまでのメルセデスという感じがするんですよね。よく言われるようなガジェット的EVではない感じ。アナログな香りが意図的に残されている。だからAMGを名のれるのかな」
多くのEVが電気自動車らしいリニアな感覚を強調する中で、メルセデスAMG EQS53 4MATIC+は確かにメルセデスらしい「マシン感」を残している。桐島さんはその理由について、「メルセデスの意地ですよね。現代に続くクルマの有り様を作ってきたメーカーとしての」と推察する。つまり、技術的な完成度の高さが、従来のメルセデスらしさを電気自動車でも実現させているということだろう。さらに、ACC(運転支援システム)の完成度については「ACCの完成度も高いですね。セットもしやすいし、動きも自然」と感じたようだ。





「運転が好きだからこそ、ACCの完成度は車選びの重要要件です」
桐島さんといえば二輪車も含めて、大の運転好きとして知られるが、そんな桐島さんがいまやACCの性能はクルマを購入する際の重要なファクターになっているのだそう。
「運転が好きだからACCが搭載されたクルマが好きなんです。だって渋滞のなかを運転するのは、どんなに運転が好きな人でも苦痛でしかないでしょう。そんな時間は車に一部を担ってもらえればいいじゃないですか。開けた道や空いてる高速道路、気持ちのいいワインディングに入ったら、存分に運転を楽しむ。そんな選択ができるのがACCですから」。
確かにメルセデスAMG EQS53 4MATIC+に搭載されているドライバーアシストシステムは、2022年時点でもクラス随一とされていた。アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックやアクティブステアリングアシストは、レーダーセンサーとカメラが前走車と車線のカーブを認識し、車線内の走行維持や自動停止/再発進をサポートしてくれる。とりわけ渋滞中のスムーズな挙動や加減速の自然さは、多くの専門家からも高い評価を受けている。
「高度に進化したセンサーとその情報解析技術は、じつはよりピュアなドライビング体験を提供してくれるんですよね」。



「アナログと呼ばれるものは99%なくなるけど、残り1%の“アジ”が価値になる」
桐島さんは一般の人たちがイメージしているよりも早いスピードでAIは進化していて、それこそが本格的なデジタル社会の到来と見ている。「アナログと呼ばれるものは99%なくなると思う。だから残り1%の“アジ”に、価値を見出すようになるんじゃないですかね」。
この視点は、デジタルクリエイターとして最先端技術に触れ続ける桐島さんならではのものだ。コーヒーを例にとって説明してくれた。
「AIの先にあるAGI(汎用人工知能)を待つまでもなく、美味しいコーヒーを淹れるなんてAIで実現できる領域。けれども、人と会話をしながら自分のために人が淹れてくれたコーヒーの方が美味しいと思えるのは何故か。クルマも同じですよ、きっと」。
「高性能であることが高級とは限らないし、デジタルが最高だとも思わない。デジタルの最前線を見ながら、葉山でカフェをはじめたのは、それが理由ですから」。


ブランドを作れるのは人間だけだと思う
桐島さんがメルセデスAMG EQS53 4MATIC+で感じた「アナログな香り」とは何だろうか。それは最新のEV技術を使いながらも、ドライバーとクルマとの関係性において人間的な感覚を残していることではないだろうか。
「ブランドを作れるのは人間だけだと思うし、そこにある物語こそがブランドなんだと思うんですよね。今日あらためて、やっぱりメルセデスはブランドだなあ、と思わされましたね」。
この言葉は、メルセデスAMG EQS53 4MATIC+が電気で動く最新テクノロジーの塊でありながら、そこにメルセデスというブランドが長年培ってきた自動車作りの哲学と物語が息づいていることを意味している。
桐島ローランドさんという多面的なクリエイターの視点から見たメルセデスAMG EQS53 4MATIC+は、単なる高性能EVではなく、デジタル化が進む未来においても決して失われることのない価値を体現したクルマだったようだ。
「AIがどれほど進歩しても、人間同士の関係性や体験の中に生まれる価値は決して代替できない」という桐島さんの言葉は、メルセデスAMG EQS53 4MATIC+が持つ「最先端技術で作られたアナログ感」という矛盾にも思える魅力の本質を的確に表現している。

『Felicity Café』
2024年8月にオープンしたFelicity Café(フェリシティカフェ)」。もとはクラシックトライアンフの修理・レストアで知られた『幸福商会』というバイクショップがあった場所。木と漆喰の優しい雰囲気の店内に、重機械を釣り上げるためのリフターに見られる。桐島さん自身がお店に立ち、コーヒーを作る。「日本ではまだ広く知られていない、カリフォルニアで人気のラベンダーシロップのラテはぜひ飲んでみてほしいなあ」。
住所:〒240-0115 神奈川県葉山町上山口2432-3
営業時間:10:00~17:00(土曜日9:00~19:00、日曜日9:00~17:00)
電話:080-8758-4368
URL:https://www.felicity.cafe/

