INTERVIEW 橋本 淳さん(junhashimoto デザイナー)

Cクラスは世界のクルマのスタンダードですね、やっぱり

香川真司、吉田麻也、槇野智章など、多くのアスリートたちがその都会的ミニマルなデザインと機能美に惚れ込むファッションブランド、junhashimoto。デザイナーの橋本淳さんは、過度な装飾を徹底して排し、着る人の佇まいを美しく見せる「理由のあるデザイン」を追求し続けている。そんな橋本さんは、自他共に認めるクルマ好きだ。かつてC63 AMGを所有し、その圧倒的なパワーに魅了された経験を持つ橋本さんに試乗いただいたのはメルセデス・ベンツの公式サイトが「その歴史上最大級の進化」と謳うC 200 ステーションワゴン スポーツ。橋本さんのデザイン哲学と、多様化する自身のライフスタイルを交えながら、メルセデス・ベンツC 200 Stationwagon Sports(ISG)の魅力を紐解く。

  • 2025年08月21日
  • 構成・文:前田陽一郎(SHIRO)
  • 写真:高柳健
橋本さんが好きと言うサイドのプレスライン。メルセデス・ベンツC200ステーションワゴン スポーツは、外観にブラックアクセントが施され、さらにスポーティな印象を強くしている

「理由のあるデザイン」。誰もが快適で格好良く

junhashimotoには意外なほどにアスリートの顧客が多い。橋本さんにそのことについて尋ねると、「少なくとも僕から言えるのは、ストレスフリーな着心地とロゴやトレンドをあからさまに表出させないトラディショナルなデザインが気に入ってもらえているんじゃないですかね」という応えが。アスリートの鍛え上げられたある種”特異“な身体をスタイリッシュに見せるデザインと、そのうえで快適な着心地を提供する最新素材をあわせ、かつフォーマルからカジュアルな場までをカバーできる、マルチパーパスなブランドはじつは多くはない。
「デザインはできるだけミニマルに抑えたいですね。もちろんトレンドは加味しますが、日常生活のあらゆるシーンで、僕のデザインした洋服を着ている人にはみんな、格好良くあってほしいんです。そのためにはシワにならない、汗をかかない、そしてストレスを感じない、という機能やパターンが必要です。さらに、過度なデザインを控えることで、長くワードローブの一員でいることができるはずです」。
橋本さんに商品の解説をお願いすると、アイテムひとつひとつに対して、「このアイテムはなぜこのようなデザインになっていて、どんな機能をもっているか」について長い解説がはじまる。それは一見してわからない「理由のあるデザイン」を伝えるためだ。

1.5ℓ直列4気筒直噴エンジンに加え、ISG(電気モーター)によりアイドリングストップからの再発進時の快適性が向上、ほとんど振動を感じることのないシフトアップ / ダウンなど、上質なフィーリング。

なぜ「セダンベースのワゴン」に惹かれるのか

「それまでの仕事中心の生活が一変するのが8年ほど前、柔術を始めた頃です。同じ頃にゴルフもはじめ、さらにキャンプも楽しむようになりました」。
行動範囲が広がると、当然のように一台のクルマに求めるものも、より深く、多角的になっていったそう。
「ライフスタイルが変わって、遠出することが当たり前になると、どうしても走行性能と積載量が気になりますよね。そこでワゴンが選択肢に挙がるわけですが、僕が惹かれるのは、最初からワゴンとしてデザインされたものではないんです。ワゴンのためにデザインされたワゴンは、もちろん素晴らしいけれど、僕から見ると少々“まとまり過ぎ”ているものが多いんです。僕がそそられるのは、セダンとして完成されたデザインを、あえてワゴン化することで生まれる、ある種の“いびつさ”なんですよね」。
橋本さんが語る「いびつさ」とは、決してネガティブな意味ではない。セダンとして完璧に計算された美しい骨格があるからこそ、後から機能性を付加するために生まれた後部のフォルムが、ある種の緊張感や物語性を帯びる。そのアンバランスさこそが魅力的に映るのだそうだ。
「セダンという美しい基本があるからこそ、ワゴンの機能美が際立つ。それって、僕の服作りとまったく同じ考え方なんです。パッと見はシンプルだけど、実はディテールに理由がある。それをわかってくれる人に届けたい。クルマ選びも、まったく同じですね」。

「各部が新しくなっていながら、水平基調で統一されたインテリアという、デザインの基本を守っているから、違和感がないんですよね」と橋本さん。

移動の時間を価値に変えるCクラスの真価

郊外への移動が増えると、クルマのステアリングを握る時間も格段に増していった。橋本さんにとって、愛車での移動時間がクリエイティブとして、休息時間としても、ますます重要になってきたことは言うまでもない。
「以前乗っていたC63 AMGのドライブフィールを人に説明するときよく使うのが、“まるで龍の背中に乗っているような”というたとえ。どこまでも続きそうな爆発的加速感は、忘れられない刺激的な体験でした。でも、今の自分がクルマに求めるのは、アドレナリンがほとばしる興奮よりも、心地よさや思考を妨げない静けさでした」。
今回試乗したメルセデス・ベンツC 200 Stationwagon Sports(ISG)は、その要求に見事に応えた。公式サイトが「心までくつろげる快適性を実現するインテリア」と表現する空間は、伊達ではなかった。
「まず、驚くほど静かでスムーズ。僕が記憶していたCクラスの感覚とはまったく違いました。ギアの繋がりも滑らかで、すべてにおいて“完璧にまとまっている”という印象です」。
上質な絨毯の上を滑るかのような滑らかな乗り心地は、長時間の移動から心身を解放し、運転の疲れを忘れさせてくれる。AMGが非日常の興奮を味わうためのマシンなら、こちらは、上質な日常をどこまでも延長し、移動の時間さえも豊かにするための空間と言えるだろう。

セダンベースのワゴンのデザインの面白さから、マーク・ニューソンのうまさ、そして自身のブランドの機能とデザインへ、話は尽きない。

あらゆる日常に溶け込む「ど真ん中」という名の洗練

メルセデス・ベンツC 200 Stationwagon Sports(ISG)の真価は、圧倒的なまでのバランス感覚にある。「悪い言い方をすれば突出したものがない。でも、良い言い方をすれば、これこそが“ど真ん中”なんですよね」と橋本さんは表現する。それは、どんなシーンにも自然に溶け込みながら、確かな品格を示す絶妙な立ち位置だ。
公式サイトが謳う「洗練されたアクティブライフのためのエクステリア」というコンセプトは、まさにこのクルマの本質を捉えている。キャンプでついた土埃さえも、このクルマにとってはフィールドで活躍した勲章のように映る。一方で、そのボディを丁寧に洗い上げ、都心のホテルのエントランスに乗り付ければ造形の美しさが際立って映る。
「どんな場所にも溶け込んでしまう。キャンプ場の泥も、都会の夜景も、どちらも様になる。この懐の深さこそ、メルセデスの、そしてその中心に位置するCクラスの魅力ですよね」。
メルセデス・ベンツが長年培ってきた、高級車でありながら徹底的に実用車であるという稀有な哲学が、この一台には色濃く反映されているのだ。それは、過度な主張を嫌い、本質的な価値を重んじる橋本さんの美意識とも通じる。
「どんな場所にも似合わないことがない。過度に主張しないのに、確かな存在感がある。僕が作る服が目指しているところと、すごく似ています」。

今回の撮影で橋本さんが履いているパンツは、ツイードのように見えて実はジャージ素材という新しい生地。自身のブランド名はあくまでも控えめに、という考えのもと、黒×黒。

パートナービークルとしてのCクラスへの期待

「20代前半の頃、イタリアのレザーブランド、カルぺディエム本社で働いていたんです。ボスもクルマ好きだったんでよくクルマの話をしましたが、イタリア人にとってもメルセデス・ベンツは、あらゆるセグメントの中心的存在だとわかったんです。それこそ巨大な長距離トラックから黒塗りのそれまでを日常で目にするわけですから。そしてそのブランドの中心にいるのがCクラスですから、Cクラスは世界のあらゆるクルマの中心的存在なんじゃないかと思うようになりましたね」。
後にC63 AMGへと続く橋本さんにとってのCクラスへのイメージの土台はイタリアでの生活で育まれた。それはCクラスが背負う、“世界のスタンダード”だった。
「そんな目線で歴代のCクラスを見返すと、どのモデルも慎重に、でも大胆に次世代のスタンダードを見越しているんですね。開発期間の長いクルマのデザインを考えるって、想像しただけでも嫌になりますけど(笑)。
ふと、話題は橋本さんが左腕にしていたアップルウォッチに。
「このウルトラをデザインしたマーク・ニューソンもそうですよね。世界のスタンダードになったアップルウォッチに最小限のデザインを加えてまったく新しい魅力を引き出してしまうなんて、すごくないですか!?Cクラスのデザインと機能に期待しちゃうのは、世界のスタンダードに触れる体験そのものだからなんです」。

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