INTERVIEW 森岡弘さん(スタイリスト)

スタイルを作る「メルセデスというワクワク」に投資する価値

ファッションスタイリストとして長年第一線で活躍し、近年は企業経営者や一般顧客に向けたトータルスタイリングへと活動領域を広げている森岡弘さん。服だけでなく、ヘアスタイルや持ち物、さらには佇まいに至るまでの“スタイル”を提供するその仕事は、装いだけにとどまらず、自己表現そのものに深く関わる営みだ。
そんな森岡さんに今回試乗してもらったのは、メルセデスAMG GT 43 クーペ。長年抱いてきたメルセデスへの思いと、スタイリストとしての哲学が交差する中で、この一台はどのように映ったのだろうか。

  • 2026年05月20日
  • 構成・文:前田陽一郎(SHIRO)
  • 写真:高柳健
  • 協力:THE GRANDUO HANEGI | FAITHNETWORK
試乗していただいたのはメルセデスAMG GT 43 クーペ。ロングノーズと張り出したホイールハウスがスポーツマインドを掻き立てながら、可倒式リヤシートの実用性を兼ね備える。

スタイルは「整える」ものではなく、「更新し続ける」もの

「街を歩いていると、もっと魅力的になれるのに、服や髪型に気が回っていない“惜しいな”という人を頻繁に見かけます」。
森岡さんの言葉は、鋭い観察から始まる。しかしそこには批評性だけでなく、「もっと良くなるはずだ」という前向きな視点がある。
「服だけじゃないんですよ。ヘアスタイルも、持ち物も、その人の周りにあるもの全部がちゃんと寄り添っていると、その人はもっと魅力的に見えるはずなんです」。
現在の仕事は、まさにその“寄り添い方”を設計することにある。クライアントはタレントに限らず、企業経営者や一般の人々へと広がっている。
「企業の中には序列文化があるじゃないですか。社長のネクタイが変でも誰も言えないですよね(笑)。だから客観的な声として、僕のように“少し変えてみませんか”と提案する役割が求められているんです」。
その背景には、時代の変化もある。SNSによって“見え方”が可視化され、個人の外見が社会的な評価と結びつくようになった。だが、森岡さん自身は「完成されたスタイル」を持つことには興味がない。
「自分もまだ探している途中なんです。新しいブランドも試すし、失敗もする。でも、その“間違い”を面白がれるかどうかが大事だと思っています」。
スタイルとは固定されるものではなく、更新され続けるもの。むしろ変わり続けることこそが、その人らしさを保つための条件なのかもしれない。

全長4,730mm、全幅1,930mmのボディサイズは、日常でのユーザビリティを考えても嬉しい。「パフォーマンス・ラグジュアリー」を標榜する流麗なシルエットはサイドから眺めた時にその印象を最大にする。

森岡さんにとってのメルセデスとは

森岡さんにとってメルセデスは、輸入車ブランドのひとつではない。ライフステージの変化に連れ添ってくれた伴侶のような存在だ。最初に手にしたのは、30代後半の頃のE430のワゴンだった。
「当時はとにかく荷物が多かったんです。スタイリストとして、洋服を運ぶことが仕事の一部だったから、“ちゃんとした車に乗らなきゃいけない”という意識もあって、メルセデスを選びました」。
実用性を軸に選んだ一台。しかし、その選択の裏には、メルセデスというブランドが持つ“信頼の記号”があったことも確かだ。購入時、周囲から投げかけられた「アガリの車」という言葉は、今でも印象に残っているという。
「それに乗ったら他に戻れない、って言われて。確かに、満足度は高かったですね」。
その後もワゴンを乗り継ぎ、やがてGクラスへと移行する。だが、ライフステージの変化とともに、メルセデスとの距離は一度離れることになる。それでも、その存在は森岡さんの中で消えることはなかった。
「車って、服と同じで“どう見られるか”に直結する存在ですよね。メルセデスは、その意味で信頼の記号であると同時に、スタイルを標榜するブランドでもありますね」。
その原点には若い頃に観た一本の映画がある。『アメリカン・ジゴロ』。リチャード・ギアがアルマーニのスーツをまといメルセデスベンツ450SLに乗る姿。その完成されたスタイルは、強烈な記憶として刻まれた。
「服と車が一体になって、その人のパーソナリティはもちろん、映画の世界観までも作っている。その象徴がメルセデスでした」。
それは憧れだけにとどまらず、「スタイルとは何か」を教えてくれた原体験でもあったそう。

モータースポーツ由来の「2.0ℓ直列4気筒エンジン+BSG」を搭載。モーター内蔵のエレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーがターボラグを解消し、優れたレスポンスを実現する。試乗車はオプションのAMGイエロー・ブレーキキャリパーを装着する。

なぜ今、GTに惹かれるのか

今回、森岡さんが試乗を希望していたのはメルセデスのなかでも、GTだった。
「これまでは仕事のためにクルマを選んできたけど、今はその必要がなくなってきましたから」。
ライフスタイルの変化は、車に求めるものを大きく変える。
「子どもが独立して、夫婦二人の生活になれば、極端なところ2シーターでもいい。そう考えられるようになると、“本当に乗りたい車”を選びたくなるんですよね」。
そこにあるのは、合理性ではなく感情だ。
「ワクワクするかどうか。それが一番大事なんです」。
森岡さんは繰り返しそう語る。効率だけを考えれば、車は必ずしも必要ではない。ましてや純粋にその美しさと運転を楽しむための車なんて。
「移動のことだけを考えれば電車の方が安いし便利かもしれない。でも、“ワクワクするものにお金を使う”って、すごく意味のあることだと思うんです。それは自分の感情に投資することだから」。
その価値観は、服選びとまったく同じだ。最大公約数的な選択ではなく、自分がときめくものを選ぶ。その積み重ねが、スタイルを形作る。そして今、その選択肢のひとつとしてGTがある。

この日、森岡さんが着用していたスーツはデザインワークス。細身のシルエットながら、最新の伸縮素材を用いた軽快な着用感で知られる。シューズはクロケット&ジョーンズ。メガネはトムフォード。どれも実用的でありながらエレガント。

スペックの先にある、デザインと体験の完成度

メルセデスAMG GT 43 クーペは、ブランドのスポーツモデルの中では比較的エントリーに位置付けられる存在だ。しかし、その中身は極めて高度に仕上げられている。搭載されるのは直列4気筒2.0リッターターボエンジン。電動スーパーチャージャー技術を組み合わせることで、低回転域からの鋭いレスポンスと高回転域での伸びを両立し、約380psという出力を発揮する。FRレイアウトによる自然なハンドリングと、AMGならではの緻密なセッティングは、日常とスポーツの境界を滑らかにつなぐ。しかし森岡さんが強く惹かれたのは、スペック以上に“見え方”だった。
「このフォルムはすごく魅力的ですよね。ロングノーズで、後ろに流れていくラインがとても美しい」。
低く構えたボディ、張り出したフェンダー、そして流麗なルーフライン。GT 43 クーペの造形は、機能美と官能性が高次元で融合している。
「服も同じで、ほんの少しのラインの違いで印象が変わる。この車は、その“微妙なバランス”がすごくうまい」。
インテリアに目を向けると、デジタルディスプレイとスポーツカーらしい包み込まれるようなコックピットが共存する。操作系の配置や質感も含め、ドライバーを中心に設計された空間だ。
「あの『アメリカン・ジゴロ』のSLがそうだったように、このGTも周りの空気を変える存在感がありますよね。それも含めて“スタイル”なんだと思います」。
つまりこの車は、スペックでは測りきれない「どう感じるか」まで設計されたプロダクトなのだ。

スタイルの延長線上にある一台

長い自動車遍歴を経た森岡さんにとって、もはや車はただ便利な移動手段ではない。
「服も車も同じで、その人の価値観がそのまま表れるものなんです」。
これまでの車選びは、仕事や環境に強く影響されてきた。しかし今、その基準は明確に変わりつつある。
「“必要だから”じゃなくて、“好きだから”選びたい」。
GT 43 クーペは、その価値観に対するひとつの答えだろう。スペック、デザイン、ブランドストーリー。そのすべてが、所有する体験として統合されている。
「結局、ワクワクするかどうか。それに尽きるんですよね」。
その言葉はシンプルだが、本質的だ。スタイルとは、外側を整えるだけでは終わらない。内側の価値観が自然とにじみ出た結果として現れるものだからだ。そして森岡さんにとっての車選びもまた、その延長線上にある。メルセデスAMG GT 43 クーペは、そのことを確かに教えてくれる存在だったようだ。

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