INTERVIEW 坪井盛朗さん(柔術指導者/デザイン会社経営)
「やっぱりCLAは僕にとってのライフスタイルカーです」
柔術指導者として鎌倉と藤沢に道場を構え、およそ400人の会員を率いる坪井盛朗さん。一方で長年空間デザイン、ユニフォームデザイン、プロダクトデザインの仕事に携わり、時間があればロングボードを抱えて海へ向かう。家族と暮らす鎌倉では、柔術、仕事、サーフィンを自分なりのリズムで組み立てる生活を送っている。そんな坪井さんにとって、自動車の基準は幼い頃から変わらずメルセデス・ベンツだという。最新のCLA 220 シューティングブレークは、その「基準」をどう更新したのだろうか。
- 2026年09月07日
- 構成・文:前田陽一郎(SHIRO)
- 写真:高柳健



柔術と海が日常にある、鎌倉での暮らし
「とにかくメルセデスが好きで、つい最近まで2015年モデルのCLAシューティングブレークに乗ってました」。
職業、柔術指導者、デザイナー。サーフィンとオートバイという趣味に加えて、家族との時間も大切にする。そんな、多彩な顔をもつ坪井さんが東京から鎌倉へ移り住んだのは、およそ15年前。東京駅にもほど近い場所に建てた一軒家を手放し、サーフィンを通じて以前から足を運んでいた鎌倉へ生活の拠点を移した。
「東京は今でも大好きなんですよ。でも鎌倉は特別に好きです」。
東京時代から続けていた柔術では、青山の道場で指導も経験した。鎌倉へ移住した当時はまだ根付いていなかった、柔術を日常的に楽しむ文化を定着させたいと道場を開設。現在では鎌倉と藤沢の2拠点を合わせて約400人の会員が集まる。
「習い事って月に1、2回、多くても週1回くらいだったりしますよね。でも柔術をやる人は週3回、4回になる。ライフスタイルの一部になるんです」。
ブラジル発祥の柔術とサーフカルチャーにはもともと親和性があり、道場の会員にもサーフィンやヨットなど海とつながる趣味を持つ人が多い。ロングボーダーである坪井さんも波があれば海へ入り、その後は道着に着替えて道場へ。デザインの仕事を夜に進めることもある。家族との時間、柔術、仕事、海をきっちり切り分けるのではなく、その日の状況に合わせながら組み立てる。
「鎌倉には、そういうライフスタイルを送れるように、自分で仕事を選んだり、作り出したりしている人が多いんですよね」。
そんな暮らしの中で、自動車は行動するための大切な道具だ。


「車の匂い」までメルセデスが基準
「僕にとっては車イコール、メルセデスなんですよね」という坪井さん。その原点が父親の存在だ。幼い頃、自宅のガレージにはメルセデス・ベンツ450SELと280CEクーペが並んでいた。家族で出かける時もメルセデス。280CEは父親が免許を返納するつい最近まで家族の一員として保管されていたという。
「450や280の車内の匂いが僕の中では“車の匂い”なんです」。
メルセデスの車内の匂いそのものが、自動車の原風景として記憶に刻まれている。父親は若い頃からスキーや自動車、オートバイを楽しむ行動的な人だった。横浜で米軍払い下げの車を手に入れ、インディアンのオートバイにも乗ったという。坪井さんの車やアウトドアへの距離の近さにも、その影響が見える。本人の車歴も多彩だ。18歳の時にヤナセで購入したフォルクスワーゲン・ゴルフにはじまり、ルノー、フィアット、BMW、そして数々の旧車を乗り継いだ。その一方で、Cクラスのワゴンやセダン、CLA シューティングブレーク、Gクラス、CLSと、何度もメルセデスへ戻っている。さまざまな車を知ったうえでも、評価するときの基準線として残り続ける。それが坪井さんにとってのメルセデス・ベンツなのだそう。



プロダクトデザインの頂点としてのメルセデス
最新のCLA シューティングブレークを前にして、デザイナーでもある坪井さんが強く反応したのは、やはりデザインだった。以前にも2015年式のCLA シューティングブレークを所有していたからこそ、新旧の違いにも敏感だ。
「ライト周りのデザインはまだ見慣れないですね。でも個人的好き嫌いを超越して、これが正解なんだと思います」。そしてこう続ける。
「僕はプロダクトデザインのトップにあるもののひとつがカーデザインだと思っているんです。投資規模や開発期間を考慮すると、そこで仕事をしている人たちは、僕らが考えている一つ、二つ先を見ていなきゃならない。そのデザインに、次代を引っ張り上げる力がないわけがない」。
新型CLA シューティングブレークも、低く流れるルーフラインと大きなテールゲートという従来の個性を受け継ぎながら、より滑らかで未来的なプロポーションへ進化しながらも、広いラゲッジスペースと機能性を併せ持つ。
「都会が似合う車だと思うんですけど、キャリアを積んでキャンプに行ったり、サーフィンに行ったり、とにかくマルチに使ってました」。
本人がCLA シューティングブレークを「ライフスタイルカー」と表現する理由はここにある。
都会的なデザインを持ちながら、海にもキャンプにも家族との移動にも使える。自分の生活を車に合わせるのではなく、自分のスタイルで自由に使い切れる車なのだ。



デザイナーの視点で評価する「基礎レベル」の高さ
空間をデザインするプロとしてメルセデスのインテリアをどう見るのか。坪井さんの答えは明快だった。
「ズバ抜けて好きですよ」。
ステアリングの造形、素材の選び方、ステッチや細部の仕上げ。そして、それらを一つの空間としてまとめ上げる完成度を高く評価する。
「全モデルを通じて、メルセデスの内装は本当にいいですね。そもそもの基礎レベルが高いと思います」。
見た目だけではない。ステアリング上のスイッチ類をはじめ、触れた時の感覚や操作のしやすさまで含めて設計されていることに価値を感じている。新型CLAでは、そのインテリアがさらにデジタル空間へと進化した。大型ディスプレイを横方向に展開するMBUX Superscreenなど、従来の「計器盤」という考え方から一歩進んだコックピットを構成している。坪井さん自身も、それを「コックピット」と表現した。最初に見た時からすべてが馴染む必要はないという。優れたデザインであれば、使う側の感覚が追いつき、それが新しい日常になる。「だからこそ、過去に成功した形へ戻るよりも、次のスタンダードを提示してほしい」。その考え方には、デザイナーとしての坪井さんの価値観がよく表れている。


AIは「使うもの」から「相棒」へ
CLAの進化は、見える部分だけではない。
新型では車両全体を統合するMB.OSを採用し、最新世代のMBUXにはAIを活用したバーチャルアシスタントも組み込まれている。
今回の試乗だけではその可能性をすべて体験することはできなかったが、坪井さんはAIが車との付き合い方を変えることに期待する。
「今はAIを“使う”という感覚ですけど、これから“一緒に遊べる”ようになっていったら楽しいですよね」。例えばボードを積んで海へ行ったものの、いつものポイントには波がない。そんな時、車に問いかければ、波の状況を探し、条件のいい場所へ案内してくれる。さらに駐車できる場所まで考えてくれたら嬉しい。
「一番いいポイントへ連れていって、と言ったら連れていってくれる。そういう関係に期待しますね」。
AIが機能を呼び出すための道具から、人の行動範囲を広げてくれる相棒へ変わる。坪井さんが期待するのは、そんな未来だ。


変わらないために、変わり続ける
柔術には長い歴史がある。しかし道場で繰り返されているのは、昔の型をそのまま保存することではない。基本となる身体の使い方を身につけ、その土台の上で相手に応じて考え、技を組み立てる。新しい技術が生まれ、スタイルも変化する。それでも根本にある原理は変わらない。坪井さんがメルセデス・ベンツに感じているものも、それに近いのかもしれない。幼い頃、父親の450SELや280CEで覚えた安心感。車の匂いまで含めて記憶に刻まれた「基準」は、今も残っている。だが最新のCLA シューティングブレークは、過去を再現する車ではない。新しいデザインをまとい、コクピットはデジタル化され、AIとの対話まで始まろうとしている。
「相変わらず先頭を走ってほしいですね」。
坪井さんがメルセデスに期待することを尋ねた時、返ってきた言葉だ。柔術も、基本があるから自由に動ける。デザインも、確かな機能があるから新しい表現へ踏み出せる。そしてメルセデスも、長い時間をかけて築いた基準があるからこそ、その先へ進むことができる。守るべきものを知りながら、更新し続ける。柔術を教え、デザインの仕事をし、波があれば海へ向かう坪井盛朗さんにCLA シューティングブレークがよく似合う理由は、そんなところにあるのかもしれない。



