EV・PHEV・HV・FCVの違いとは?「EV」の種類やメカニズム

環境に優しい車として注目を集めているEVですが、電気エネルギーを使って走る車(電動車両)にはさまざまな種類があります。名前が似ていてとても紛らわしく、何の略語であるかわかりにくいこともしばしばですが、ライフスタイルに合った一台を見つけるために、それぞれのカテゴリにどんな特徴があるのか知っておきましょう。

  • 2022年04月08日
  • 監修:竹岡 圭
  • 文:渡瀬基樹
  • イラスト:田代哲也
【イメージ】メイン
電動車両は外部から取り入れるエネルギーの種類で区別されている

「EV」にはさまざまな種類があります。メカニズムの違いを知っていますか?

大気汚染や地球温暖化を防ぐため、EVやハイブリッドカーといった、バッテリーやモーターを搭載する車両の普及が進んでいます。しかしこれらの電動車両は種類が多いうえに、カテゴリの名前がローマ字やカタカナばかりで紛らわしく、瞬間的に区別しづらい側面も。そこで、電動車両にはどのような種類があり、どのような構造となっているかを、あらためて整理してみましょう。

現在、日本で市販されている電動車両をカテゴリ化すると、右の表のように、大きく4つに分類できます。EVは電気(外部電源からの充電)、PHEVは電気と化石燃料(ガソリンや軽油など)、HVは化石燃料、FCVは水素と、走行するために取り入れるエネルギーの違いによって分類されています。

  • この記事は自動車ジャーナリストの竹岡圭さんによる監修のもと、制作しています。電動車両はモデルによってシステムの細部が異なりますが、ここでは代表的な構造を紹介しています。また、イラストは駆動方式を表しているものではありません。
EV(BEV・電気自動車) [(Battery) Electric Vehicle]

EV(BEV・電気自動車) [(Battery) Electric Vehicle]

もっとも構造がシンプルなのがEVです。吸排気経路や燃料ポンプなどが不要で、部品点数が少ないのがメリットです。ウィークポイントは、走行できる距離がバッテリーの容量に比例するため、長距離を一度で走るためには大きなバッテリーが必要となること。適度なサイズのバッテリーにとどめると、こまめな充電が必要ですが、ガソリンの給油や水素の充填と比べると、長い充電時間が必要となります。ただし、就寝時間中に充電を行えば、その欠点が解消されるため、EVは通勤や通学、買い物などといった1日の走行距離が短く、夜間等の就寝時間中に充電が可能な使い方に適しています。

主なEVモデル

HV(HEV・ハイブリッドカー) [Hybrid (Electric) Vehicle]

内燃機関車が備えるエンジンと、EVが備えるモーターの2つの動力源を持つのがHVですが、EVのように外部から充電することはできず、アクセルペダルオフやブレーキングといった減速時に得られる回生エネルギーを使って、自動的に充電しています。内燃機関車と同様にガソリンや軽油を燃料としているため、バッテリーの充電残量に対する航続距離や給油時間の心配はありません。

HVはシステムによって、3つのカテゴリに分類することができます。パラレル方式やシリーズ方式は比較的構造がシンプルです。スプリット方式は構造が複雑で、重量も重くなりがちですが、より緻密で効率的な制御が可能です。

パラレル方式

パラレル方式

走行エネルギーはエンジンが主役となり、発進や加速の時など高負荷の状況でモーターがサポートするのがパラレル方式です。「パラレル」とは「並列」を意味し、エンジンとモーターは独立しています。欧州車に多い「マイルドハイブリッド」も、パラレル方式に含まれます。

シリーズ方式

シリーズ方式

エンジンは発電機として使用し、発生した電気でモーターを動かして走行するのがシリーズ方式です。シリーズとは「直列」を意味しています。EVは、外部からバッテリーに充電し、その電気でモーターを動かしていますが、シリーズハイブリッドはガソリンを燃料とする発電機がその役割を担っています。

スプリット方式

スプリット方式

パラレルとシリーズの両方の機能を持つのがスプリット方式です。エンジンのみ、モーターのみで走行する時もあれば、両方の動力で走行する時もあるため、HVの中で構造や制御がもっとも複雑となっています。エンジンの動力が駆動と発電に使用されるため、スプリット(分割)方式と呼ばれています。

主なHVモデル

PHEV(PHV・プラグインハイブリッドカー) [Plug-in Hybrid (Electric) Vehicle]

PHEV(PHV・プラグインハイブリッドカー) [Plug-in Hybrid (Electric) Vehicle]

EVが外部から充電する電気、HVが化石燃料をエネルギー源としているのに対して、電気と化石燃料の両方をエネルギー源としているのがPHEVです。普段はEVとして、長距離走行はHVとして走行できます。構造が複雑ですが、充電と給油の2つの方法でエネルギーを得ることができるため、使い勝手がいいのがメリットです。構造的には、パラレル方式やスプリット方式のHVのバッテリーに、外部から充電できる機能をつけたようなかたち(バッテリーサイズなど細部は異なる)となります。

レンジエクステンダー(RE EV)[Range-Extended Electric Vehicle]

レンジエクステンダー(RE EV)[Range-Extended Electric Vehicle]

一般的なPHEVと異なり、シリーズハイブリッドを外部充電可能としたような構造(バッテリーサイズなど細部は異なる)がレンジエクステンダーです。EVに発電用のエンジンを取り付けたような構造と言い換えることもできます。あくまでEVとしての使い方(外部充電)がメインで、エンジン発電はいざという時の補助用という位置づけですので、シリーズハイブリッドよりエンジンは小さく、バッテリーは大容量になっています。

主なPHEVモデル

FCV(燃料電池車)[Fuel Cell Vehicle]

FCV(燃料電池車)[Fuel Cell Vehicle]

水素と酸素を化学反応させることで発電し、モーターを駆動します。シリーズハイブリッドのガソリン発電を、水素発電に替えたかたちです。最大の難点は、水素を充填するステーションが少ないこと。自家用車として使用するためには制約が多いため、営業車やバスなど、決められたコースを走行するカテゴリに向いたシステムといえるでしょう。

主なFCVモデル

メルセデス・ベンツ GLC F-CELL(販売終了)

電動車両

このように、電動車両にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。構造や機構、エネルギーの種類が異なるため、どれがもっともエコと順位をつけるのは難しくライフスタイルによっても変化します。たとえばソーラーパネルを備えた住宅にお住まいの方などは、太陽光発電で得たエネルギーを有効に活用できる、EVやPHEVが向いています。

車の使い方によっても、違いが出てきます。長距離を走行する機会が多ければ、HVやPHEVがおすすめですが、通勤や買い物など限られた範囲で使用するのであれば、EVも視野に入ってくるでしょう。家族で複数台を所有している場合は、内燃機関車を含めた構成を考えた方がいいかもしれません。

ヤナセはHVからPHEV、EVまでさまざまなタイプの電動車両を取り扱っています。それぞれのメリット・デメリットをしっかり認識した上で、ご自身のライフスタイルに合った車をチョイスすることで、素敵なカーライフを送ることができるでしょう。

  • この記事でご紹介しているモデルは記事作成時点のものであり、仕様や該当するカテゴリは変更になることがあります。また、販売状況についてはお近くのショウルームまでお問い合わせください。

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