INTERVIEW 窪川勝哉さん(インテリアスタイリスト)

EQの内装は“デザインの渋滞”を起こしていないから、心地いい

ボディを包む滑らかな面と、研ぎ澄まされた緊張感を湛えるルーフラインの下というか中には、高度なデジタル化を成し遂げたうえで“洗練”をきわめたインテリアが収まっている。そんな総体としての「かつて見たことのない美しさ」を、インテリアの専門家はどのように解釈し、どう評価するのだろうか?

  • 2023年01月12日
  • 文:伊達軍曹
  • 撮影:佐藤亮太

「かつて見たことのない美しさ」は内装も同じ

新開発のEV専用プラットフォームを採用した初めてのメルセデス、「EQS」。メルセデスEQのフラッグシップモデルとなったそれは当然ながら、パワフルな電動パワートレイン「eATS」や、EQS 450+の場合で700kmにも及ぶ一充電走行距離、連続可変ダンピングシステムとエアサスペンションを組み合わせたAIRMATIC等々の「走りにまつわるエトセトラ」に、まずは注目すべきEVであることは論をまたない。

だが同時にメルセデス・ベンツ EQSは「かつて見たことのない美しさ」に大注目すべき一台でもある。

女性誌などで特集されるほどの人気インテリアスタイリストであり、プロップスタイリスト(美術や小道具のスタイリスト)でもあり、そしてメルセデス・ベンツ Gクラスやスマート フォーツークーペなどを愛用しているカーガイでもある窪川勝哉氏に聞いた。

「メルセデスEQSの印象を語る前に、まずはテレビについて――といいますか、インテリアにおける“ノイズ”についてお話しさせてください。多くの家にはテレビというものがあるはずですし、必要なものでもあります。しかし“落ち着きのあるインテリアを作る”という意味においてはテレビって、ノイズ以外の何物でもないんですよね。つまり“邪魔”ということです」

どんなにスタイリッシュなインテリアを構築したとしても、あの、黒く大きな四角い物体が壁面近くに鎮座しているだけで、スタイリッシュさや暖かみのようなものは台無しになってしまうのだという。

「いや“台無し”とまでは言えないかもしれませんが、少なくとも“ノイズ”になることは間違いありません。そのため、できればテレビのディスプレイというのは壁面に埋め込んでしまい、必要なときだけ表に出すという方式が望ましいのですが……まぁ実際はなかなか難しいですよね。よほどの大豪邸でもない限り、部屋の中で55インチや65インチなどのテレビを置ける場所というのは限られていますので、その“限られた場所”に置くしかありません。するとどうなるかというと、ソファやアームチェアなどを置く場所も、テレビによって決まってしまうわけです。場合によってはダイニングテーブルを置く場所や日々の動線も、テレビが置かれる場所の影響を受けることになるでしょう。言ってみれば支配されてしまうんですよね、好むと好まざるにかかわらず」

EQSのインテリアの魅力は“ノイズレス”なところ

「そして――すみません、ここからやっとEQSの話になるわけですが(笑)、EQS 450+にパッケージオプション設定されるMBUXハイパースクリーンは『ノイズがない』という意味において、本当に素晴らしい装備だと思います」

「MBUXハイパースクリーン」とは、つらなった3枚の高精細パネル(12.3インチのコックピットディスプレイと17.7インチの有機ELメディアディスプレイ、12.3インチの助手席側有機ELフロントディスプレイ)で構成されるディスプレイシステムだ。

「伝統的なアナログメーターやグローブボックス、あるいはナビゲーション画面などを映し出す単体のセンターディスプレイなどを“ノイズ”と言ってしまうのは語弊がありますが、機能のための物体であるそれらは、くつろぐ空間にとってはやはりノイズなのです。MBUXハイパースクリーンのような形で“ノイズを顕在化させない”というのは、インテリアスタイリングの考え方としては正しいと言わざるを得ません」

インストルメントパネル全体がワイドスクリーンとなっていて、1枚のガラスカバーの下で3種類の高解像度ディスプレイがつながっているように見えるMBUXハイパースクリーンは、まさに“ノイズレス”だ。

電源OFFの際には余計な意匠がない「漆黒の闇」となり、設定次第でセンター部と助手席側のディスプレイはOFFにすることができる。助手席にパッセンジャーが座る際には、パッセンジャーは眼前に広がる12.3インチの助手席側有機ELフロントディスプレイで独自の、ドライバーが見ているものとは異なる画面を見ることができるわけだが、その画面がドライバーにとっての“ノイズ”になることもない。

なぜならば助手席側の有機ELディスプレイは、ドライバーがそちらに視線を送ると自動的に「ドライバーからは見えにくくなる」という作りになっているからだ。

「これはEQSのインテリア全体に言えることですが、この車の内装は“デザインの渋滞”を起こしていないんですよね。だから、心地よいのです。先ほど申し上げたMBUXハイパースクリーンもそうですが、例えばここを見てください」

必要な時以外は“見えない”のもデザイン

そういって窪川氏が指差したのは、ドア内側のアームレスト部分。ウインドウ開閉スイッチがあり、その周囲にウッドが貼られている箇所だ。

「この付近には、こちらのウッドに加えてメタル(金属)、樹脂、レザー、そしてレザーパーツのパイピングなど、さまざまなマテリアルが使われています。そしてそれらの形状や大きさもまちまちです。で、ここにウッドを使用したのはおそらく“落ち着き感”のようなものを出すためだと推測しますが、このウッド、よく見るとちゃんと柾目(まさめ)なんですよね」

柾目とは、丸太をカットして製材した際の面に現れる年輪が、平行でまっすぐ綺麗に流れている木目のこと。そうでない木目は「板目」と呼ばれている。柾目は高樹齢の大径木からであっても、1本の木から取れる量は少ない。

「多種多様なマテリアルが混在しているエリアに、もしも板目のウッドを貼ってしまったら、その木目のうるささによって“デザインの渋滞”が起きてしまいます。しかしここに柾目の、節のない、しかも落ち着いた色味のウッドを用いていることで、こんなにもマテリアルの種類が多いにもかかわらず、デザインの渋滞がまったく起きていないんです。

EQSの公式サイトには『先進的なデザインと極められた使いやすさが高度に調和した空間でありながら、深い心地よさが乗る人を包みこむ』と書かれていますが、まさに事実ですね。こういった細かなところまで繊細な気づかいが行き届いている車だからこそ、EQSの車内はこんなにも最先端のデジタル化された空間でありながら、カタログの文言どおりの『深い心地よさ』に包まれるのでしょう」

加えて窪川さんは、EQSがEVであるという根本的な部分に対しても「Yes!」と言う。

「今、こうしてメルセデス・ベンツ文京さんのハンドオーバースペース(車両をお客様に引き渡すスペース)のソファに座って、EQSの美しいボディラインをごく間近から眺めているわけですが、これってよく考えたら凄いことですよね。こうして『愛車を眺めることができるガレージハウス』を作ってらっしゃる人も多いですが、エンジン車だと、どうしたってリビングとガレージの間を壁やガラスで完全に仕切らないといけないじゃないですか? リビングに排ガスを入れるわけにはいきませんから」

確かに、そうかもしれない。

「でもEQSなら、床などの設計次第では『リビングルームに愛車が収まるガレージハウス』という、かなり斬新なモノを作れるわけですよ。だってEVだから排ガスがいっさい出ませんし、エンジンからの騒音もゼロだし! いやぁ、僕もそんなガレージハウスをぜひ作ってみたいな……」

冒頭付近で「窪川勝哉さんは普段、Gクラスとスマートに乗っている」との旨申し上げたが、それらは最新世代または最終世代のそれではなく、西暦2000年付近に製造されたアナログ感たっぷりのGクラスとスマートだ。窪川さんはあえて、そういった世代のガソリンアナログ名車を愛好している。

だがそんな窪川さんであっても激賞し、そして「正直、長距離の移動用として本気で欲しくなりました(笑)」と言わしめたメルセデス・ベンツ EQS。そんなEQSが「新しい時代のラグジュアリーを体現するモデル」としての名声を確立させるまでに、さほどの時間はかからないはずだ。

電気自動車に、最高峰を。 The EQS

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