INTERVIEW 村山 正さん(会社役員)

憧れていたあの頃にスッと戻れるビートル

車の販売のプロフェッショナルだった村山さんが、学生時代から憧れて続けていたフォルクスワーゲン ビートル。ようやく手に入れた1台は、初期型の息吹が残された1966年式の「ヤナセもの」でした。「もっとも気軽に遊べるクラッシックカー」と語るビートルの魅力と、改めてヤナセでのメンテナンスを考えているという理由について、村山さんにじっくりとお話を伺いました。

  • 2022年07月21日
  • インタビュー:堀江史朗
  • 文:渡瀬基樹
  • 写真:尾形和美
INTERVIEW 村山 正さん

「ビートルズ」来日と同じ1966年式「ビートル」

サーブ・シトロエン・プジョーを扱っていた西武自動車販売、インポーターであるクライスラージャパン、フェラーリやマセラティ、ポルシェのディーラーなど、輸入車のプロフェッショナルとしてさまざまな立場で活躍してきた村山さん。車を仕事として扱っていた頃は、愛車もそれぞれのブランドを尊重して選ばざるを得なかったそうです。

車の外装コーティングや洗車などのサービスを行う会社の執行役員を務める現在、ようやく好きな車を自由に選ぶことができるようになりました。そんな村山さんが若い頃からずっと憧れていた車が、フォルクスワーゲン タイプ1(ビートル)でした。

「父が車好きだったこともあって、私も小さい頃から興味を持っていましたが、なかでも好きだったのがビートルでした。大学を出てすぐの1985年ごろ、世田谷の閑静な住宅街にフォルクスワーゲンの水平対向エンジン(フラット4)車が並んでいる店があって、いつかは手に入れたいと思っていましたね」

積年の思いが、ついに成就したのは3年前のこと。「雑誌やネットを穴が空くほど見続けた」結果、九州のお店で販売されているのを見つけたのが、現在の愛車となるビートルでした。

「『ヤナセもの』で、価格は200万円。『ビートル』だけに、ビートルズが来日したのと同じ1966年式というのも、大きなポイントでした」

ビートル
ビートル
内装の状態は極めて良好で、シートはなんとオリジナルのまま。そういえば、横断歩道を4人が渡るジャケットで知られるビートルズの名盤「Abbey Road」のジャケットにも、フォルクスワーゲン ビートルは映っている。
村山 正さんと「Abbey Road」
「ロクナナ」以降と比べ、ヘッドライトが寝ているのが初期型の特徴。フロントフェンダーのラインに沿った流麗なデザインだ。
ビートル
ビートル

「無理な進化」をする前の自由なデザインが魅力

ビートルは、1967年式(いわゆる「ロクナナ」)から大きな改良を受けました。電装系が6Vから12Vへと変わり、ヘッドライトレンズが垂直に立ち上がります。翌年には北米の安全基準に適合するため、バンパーが直線的な形状となるなど、ボディの大型化が図られました。

「当時は、日本車の人気が世界中で高まり始めた頃でした。安くて性能のいい日本車の台頭で、世界中のメーカーが焦り始めた。技術的に対抗するため、フォルクスワーゲンがビートルの排気量を1.3Lから1.5Lへとアップしたのもこの頃でした」

こうしたパワーアップやデザイン改良、大型化は技術に合わせた進化ではなく、他国を意識した結果の「無理のある進化」と、村山さんには映ったそうです。一連の変更がなされる前の、自由に作られたデザインを求めていた村山さんにとって、現在の愛車は一目惚れといえる出会いとなりました。

「実は見つけた瞬間にこれだ!と思って、実車を見ずに購入したんです。リアにはヤナセのステッカーが貼ってあって、並行輸入車が多かった当時のビートルとしては、希少な1台であることはすぐにわかりました。ただ、状態の良し悪しはわからない。調子が悪ければエンジンを載せ替えるくらいの出費となることも、覚悟していました」

ビートル
ビートル
ビートル
ビートルは1953年からヤナセが販売を開始。この年は105台が輸入された。リアガラスのセンターピラーが廃止された「オーバルウインドウ」以降のモデルが扱われた。

フォルクスワーゲンの歴史をよく知るヤナセのメンテナンスを受けてみたい

しかし、手元に届いたビートルのコンディションは、村山さんの期待を上回るものでした。外観や内装は良好な状態を保っており、危惧していたエンジンもオーバーホールを行っただけで、快調な走りをみせてくれました。

「届いたばかりの時は不調だったエンジンも、キャブやクラッチを全交換するなど、メンテナンスをしたら見違えるような走りになりました。ビートルのいいところは、パーツや工賃が安いところ。ここまでの整備費用はトータルで30万円くらいなんです」

長期間に渡って生産され、世界各地で愛されたビートルは、パーツの供給が潤沢です。サードパーティを含めればパーツが豊富で、クラシックカーとしては驚くほど安価に維持することができるそう。

「ただメカニカルな部分に関しては、近々ヤナセさんでメンテナンスをしてもらいたいと思っているんです。これまでは専業店でお願いしてきましたが、1度は王道としてヤナセさんの整備を受けてみたいですね」

「特にフォルクスワーゲン江東には、日本に輸入された1号車が展示されていますし、これまでのフォルクスワーゲンの歴史をよくご存じの方もいらっしゃいます。ビートルのことを知り尽くした方に、この車を見てもらいたいなと思うんです」

ビートルを運転する村山 正さん
村山 正さん
村山 正さん

パーツが豊富で手頃だからカスタムにも挑戦しがいがある

ついに手に入れた憧れのビートルとはいえ、村山さんは飾っておくようなことはしません。生活を豊かにするための相棒として、ドライブを楽しんでいます。

「乗った瞬間に、作られた頃の世界にスッと入っていける車なんです。クラシックカーは大切に乗るために、車内を禁煙にしているオーナーの方が多いですが、私は気にせずタバコを吸うようにしています。私が学生だった60年代の雰囲気を追体験するためには、そのほうが自然だと思うのです」

これまでの愛車は、ずっとオリジナルの状態にこだわってきた村山さん。しかしビートルはカスタムにも挑戦したいと考えているといいます。

「構造がシンプルだから、自分で手を加えることができるし、気に入らなければ自分で元に戻すこともできます。カスタムパーツは豊富ですし、キャルルックのスタイルにするのも面白そう。ビートルは、いちばん気軽に遊べるクラシックカーでもあると思うんです」

ビートルと村山 正さん
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