ヤナセとクルマとヒトのコト Vol.2

「日本で一番アメリカ車を売る男」が語る「ヤナセが選ばれる理由」

ヤナセのGM部門のみならず、GMジャパンの正規ディーラーのなかで、もっとも多くの車を販売する男が「キャデラック品川/シボレー品川(旧キャデラック東京/シボレー東京)」にいる。7年に渡って営業成績を残し続けている北原は、特別なセールステクニックや奇抜なアイデアを乱発しているわけではない。ただただ地道にお客様に寄り添い、心からキャデラックを愛することで、素敵なカーライフを送るユーザーのお手伝いを続けている。

  • 2022年11月24日
  • 文:伊達軍曹
  • 写真:安岡嘉
北原 直(きたはら・すなお)。株式会社ヤナセグローバルモーターズ GM東京支店 販売課。国際認定セールス制度Goldセールスパーソン(GMゴールド認定セールス)
年間最多販売を達成したときに、GMを長らく担当していた松本幸夫副社長執行役員から譲られたという、キャデラックのバッヂ。
北原はGM(キャデラック、シボレー)やヤナセの最多販売に関するさまざまな賞を、幾度となく受賞している。

セールスに奇策はないし特殊能力も持っていない

ヤナセグローバルモーターズ GM東京支店 販売課、北原 直。「日本で一番アメリカ車を売る男」である。2014年以来7期連続で、ヤナセGM部門における年間最多販売セールスの座に輝き続けている。

どんな分野であっても一度や二度トップに立つのは――語弊を恐れず言えば――さほど難しいことではない。「勢い」や「運」が、人を短期間のみサポートしてくれることはしばしばあるからだ。だがそれを「継続」するのは難しいし、それも7期連続というのは尋常ではない。北原のセールス手法に、なんらかの「尋常ならざること」が含まれているだろうことは想像に難くない。しかし北原本人は、それを否定する。

「『セールスに奇策なし』とはよく言われるフレーズですが、私の肌感覚から言ってもそれはそのとおりです。私も奇策めいたことは何ひとつ行っていませんし、当然ですが特殊能力も持ち合わせておりませんので(笑)、日々やっているのは、ごく普通のことばかりなんですよ」

……「ごく普通のこと」だけで「7期連続」は達成できるものなのだろうか? いやその前に、北原が言う「普通」とは何を指しているのだろうか?

「まずはお客様から依頼された事柄に対しては、それがどんなものであっても『とにかく早く対応する』ということ。そして、お電話であっても直接お会いする場合でも、お客様には必ず明るく元気な大きめの声で対応する。……いわばそれだけなんですが、もしも加えて言うならば、自分が取り扱っているブランドについての深い製品知識を得られるように日々研鑽することと、ブランドに対する『愛』を持つこと――でしょうか」

メルセデス・ベンツやBMWを筆頭格とする欧州車は、日本市場においてもかなりメジャーな存在であるため、お客様の多くが「そのブランドのことをよく知っている」という状態から商談はスタートする。

だが、例えば北原が担当しているブランドのひとつであるキャデラックは、お客様が「……最近のキャデラックってどうなんだろう?」と少々の不安を抱いていたり、「今、キャデラックはどんな車を作っていて、それにはどんな個性があるのだろうか?」というような疑問から会話が始まる場合が多いと、北原は言う。

もともと車が好き、キャデラックが好きということもあるが、実際に乗ってみることでお客様が感じる疑問点を事前に洗い出しておくというのが、新型車に対する北原の営業スタイルだ。
学生時代の北原は「キャデラック フリートウッド ブロアム」に憧れたという。「堂々としたエクステリアと、他のセダンにはない圧倒的な存在感に惚れました」。社会人になってからは5台のキャデラックを乗り継いでいる。自他共に認めるキャデラック好きだ。

キャデラックが大好きだからこそお客様の気持ちがわかる

「輸入車といえば欧州車が中心となっている日本で、わざわざアメリカ車にご興味を持たれるわけですから、『個性的』なお客様もいらっしゃいます。そういった方に対して、担当セールスが通り一遍の製品知識しか持ち合わせていなかったり、キャデラックへの愛情のようなものが若干欠如していたとしたら――お客様は『……まぁ今回はやめておくか』となってしまいますよね。

私は諸元などを頭に叩き込むことはもちろん、会社の試乗車も時間を作って徹底的に走り込み、『もしも自分がこれを使うとしたら、どう使うだろうか?』『どこに他ブランドにはない美点を見いだすだろうか?』ということを検証しています。そういった積み重ねが販売台数に現れているのだと思いますが……まぁそれと同時に、私はキャデラックが大好きなんですよ(笑)。昔から憧れていましたし、今も、個人的に所有しています」

少年時代から四輪車を含む乗り物全般が大好きだったが、大学生になると、特に車に興味を抱くようになり、ガソリンスタンドでのアルバイトを始めた。そこで数々の自動車に触れることになったが、そのなかでもとりわけ北原青年の心をとらえたのがフルサイズのアメリカンセダン「キャデラック フリートウッド ブロアム」だった。

「『なんてカッコいい車なんだ!』と思いましたね。それ以来アメリカ車、特にキャデラックにぞっこんとなりました。大学卒業後は父のいる会社に入社して、1年間まったく畑違いの業種で働いたのですが、『やっぱり自分は車の、いやキャデラックの販売をやりたい!』と思い、キャデラックの正規ディーラーに転職。父も『そんなに好きならば仕方ないか』と、苦笑しつつ送り出してくれましたね」

転職先の正規ディーラーで約6年間キャデラックを販売し、2010年、ヤナセに転職。その後は前述のとおり、2014年から7年連続で「ヤナセで一番GM車を売る男」であるのみならず、「日本で一番GM車を売る男」であり続けている。そして2022年が終わるとき、おそらく北原は「8期連続」を達成しているだろう。

「今期もヤナセのGM部門でトップとなるはずですし、GMジャパンというインポーター単位で見ても、おそらくトップセールスの座を獲得できるのではないかと思っています」

物言わぬ顧客を繋ぐのは地道で真摯な対応

気になるのは、やはりその「秘訣」だ。本当に、北原が言うとおり「ごく普通のことの積み重ね」だけで、連続記録というのは達成できるものなのだろうか?

「『普通』も極めれば武器になると言いますか、『普通であること=お客様が何のストレスも感じていない状態』を構築するというのが、私にとっての『普通のことを繰り返す』ということなのかもしれません」

……どういうことだろうか?

「『いちいちクレームを付けるほどではない程度の、サービス上の違和感』を憶えたことはないでしょうか。たとえば飲食店であれば、ホールスタッフの方がこちらになかなか気づいてくれないとか、料理が冷めているわけではないけど微妙にぬるいとか。私どもの仕事であれば、お客様からのご相談を受けた際の対応のリズムが、いちいち悪いと感じたことがある方がいらっしゃるかもしれません。

そういったとき、お客様は特にクレームを言うわけでもなく『いいよ、大丈夫』とおっしゃるのですが、心のどこかでは小さな不満を覚えていらっしゃるんですよね。それが積み重なると、飲食店であれば『あの店にはもう行かない』となるでしょう。私どものショウルームでもまったく同じです。大きなクレームがあったときだけでなく、静かに離れて行ってしまうお客様もいるのです」

そうならないために北原が実践しているのが――。

「お客様の小さなストレスを溜めないための『早い対応』です。どんなことでも後回しにせず素早く対応すれば、仮にその対応が間違っていたとしても、お客様から『そうじゃなくて、こう』と言っていただけます。そうしたらもう一度、素早く対応すればいいんです。その場でわからないことがあれば、正直にその旨をお伝えしたうえで、あらためて素早く対応する。それをひたすら真摯に繰り返していれば――さらに若干のスパイスとして、私自身が妙にキャデラックやシボレーに詳しくて、ブランド愛のあるセールスであり続ければ(笑)、何か特別なことをする必要なんてないんです」

ヤナセ芝浦は日本一の工場だと心から思う

彼がやっていることは、際だった特徴はないが妙に居心地が良く、気がつけばリピートしている飲食店の経営者が、バックヤードで日々意識していることと、おそらく同じなのだろう。個人商店的な一面のある「自動車のセールス」という仕事において、北原はその経営者的手腕を駆使しながら結果を出し続けているということだ。しかし北原は「これは自分が『ヤナセ』にいるからこそできていると思っています」と言う。

「まず、お客様はヤナセという暖簾を大いに信用してくださっているという大前提があります。これはヤナセの歴史と、その歴史に泥を塗ることなくさらなる信用を積み重ねてきた先達の皆さんのおかげです。さらにヤナセにはGM部門だけでなく、全社的に優秀なセールスがたくさんいますので、そこから受ける刺激も私の糧になっています」

なかでも重要なのがアフターサービス部門の存在であると、北原は言う。

「ヤナセのセールスはサービスの現場とのコミュニケーションがとても密接です。結果を出しているセールスであればあるほど、アフターサービスを現場に丸投げはせず、メカニックやアドバイザーと連携を取っています。だからこそ、お客様のお車の状態を正確に把握できますし、『素早い対応』が可能なのです。なかでも芝浦のメカニックやアドバイザーは本当に凄い。彼ら、彼女らがいるからこそ、私の『セールストーク』が成り立っています」

ヤナセ芝浦の整備スタッフの存在が、北原のセールストークに結びついているとは、どういうことか?

「私は常々、お客様にお伝えしているのが『ヤナセの芝浦工場こそが、日本におけるGM車整備の最後の砦であり、もしも芝浦でも直せないものがあったとしたら、それはおそらく、日本のどこでも直せない』ということです。重要なのは、私はそれを『トーク』として言っているわけではないということ。自身の経験を踏まえて心からそう思っており、それをそのままお客様に申し上げています。だからこそ、お客様に『伝わっている』のでしょうね」

GM部門における7期連続、いや8期連続となるはずの、北原のトップセールスとしての座。それはもちろん北原自身の才覚と努力による部分こそが大ではある。だがヤナセというチームの総合力が、北原という個人の栄冠を支えているのもまた事実であろう。サッカーのリーグ得点王に輝いたプレーヤーが、常に1人でドリブル勝負を仕掛けていたわけではないというのと、話の構造としては同じである。

  • 感染対策を実施した上で取材・撮影をしております。
ヤナセグローバルモーターズGM東京支店
キャデラック品川/シボレー品川
住所
東京都品川区南品川3-1-4
TEL
03-5781-9533(ショウルーム)
03-5781-9534(アフターサービス)

定休日 月曜日・第二火曜日
※月曜日が祝日の場合は営業し、翌火曜日を定休日とする

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