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真夏の富士で味わう、Mercedes-AMG EQE 53 4MATIC+の上質な走り
首都圏からほど近い避暑地である富士山周辺は、夏になると多くの人で賑わいます。環境保護の観点から車両規制が行われるエリアもありますが、電気自動車(EV)は車両規制エリアも走行が認められています。そんな富士エリアをモータージャーナリストの嶋田智之氏とMercedes-AMG EQE 53 4MATIC+でドライブしました。
- 2023年07月27日
- 文:嶋田智之
- 写真:阿部昌也
富士スバルライン
マイカー規制中に富士スバルラインを
EVで走るためには?
マイカー規制期間中にEVで富士スバルラインを走行するためには、まず富士山登山者がマイカーを駐車する「富士山パーキング」(富士北麓駐車場)の料金所で「EVで富士スバルラインを走行したい」という旨を伝えます。係の人が車検証でEVであることを確認すると富士スバルラインの通行証を発行。それを富士スバルラインの料金所で見せてゲートを通過します。
環境に優しい
電気自動車だからこそ
味わえる道と景色がある
皆さんも先刻御承知のことと思いますが、バッテリーとモーターで走るEVと内燃エンジンのクルマでは、メリットとデメリットはほぼ真逆と言っていいでしょう。ただ、内燃エンジンのクルマでは越えることができないけれどEVなら楽々クリアできるもの、というのが存在するのも事実。そのひとつは通行規制です。
たとえばヨーロッパでは、各国それぞれレギュレーションは異なるものの、ざっくり言うならEVと燃料電池自動車(FCEV)のゼロエミッション車(有害な排気ガスを排出しない車)は通行可能だけれどそれ以外は走行不可で、違反した場合には高額な罰金、というようなゾーンがすでに存在していて、その動きはますます広がっていく傾向にあります。主として大都市部の環境汚染レベルを改善するための措置なのですが、いずれはそのエリアに住む人はゼロエミッション車以外の選択肢はなくなるだろう、と言われています。
それとは異なるのですが、似たような規制が日本にも存在します。自然環境保護のために観光のハイシーズンになると実施されるマイカー規制において、ゼロエミッション車のみ通行が許されるルートというのがあるのです。
そのひとつ、富士スバルラインは山梨県側から富士山五合目の吉田口までの有料道路として知られていますが、一般車が立ち入ることのできない規制期間中でも、EVとFCEVの走行は認められています。下界とは異なる心地好さを感じさせてくれる夏の富士山を、交通量が少ないうえに変化に富んだ、ドライブするのが楽しいルートで駆け上る。魅力的なことに思えませんか?
今回はMercedes-AMG EQE 53 4MATIC+で、東京から中央自動車道経由で富士山五合目の吉田口まで走り、麓のエリアを散策してくるショートトリップに出ました。メルセデスEQシリーズのミディアムセダンのハイパフォーマンスモデル。システム全体で460kW(625ps)の最高出力と950N・mの最大トルクを発揮する前後2基の高出力モーターが四輪駆動で、その力を路面に伝達することを考えただけで、気持ちが高まります。航続距離はWLTCモードで549km。通常のドライブであれば、途中での充電なしでも帰ってこられるでしょう。
富士スバルライン五合目
五合目駐車場にEVを駐車して、
富士登山はできる?
せっかくならクルマで五合目駐車場まで上がり、山頂で御来光を拝みたい。EVならこれも可能です。自分のクルマなら登山で疲れた状態で満員のバスに乗らなくていいので、楽に行動できます。ただ、マイカー規制期間中の富士スバルラインの営業時間は午前3時~午後6時(下りは午後8時)なので、注意が必要です。
写真:Takumi.Sekiguchi / PIXTA
4MATIC+と
リア・アクスルステアリングで
ワインディングもストレスフリー
河口湖インターチェンジで一般道へと降り、富士山パーキングで手続きをすませ、富士スバルラインへと滑り込みます。麓の料金所から五合目までの約30kmは変化に富んだワインディングロードで、森林の間を走り抜けていくと次第に目に飛び込んでくる光景が山岳地帯へと変化していき、最終的には遠くの山々や眼下で輝く湖を見渡せるところへ到達できる、ダイナミックなルートです。
こうした道だとスポーツドライビングを試したい気分が盛り上がってくるのですが、今日はお預け。車重が2.5トンある重量級でホイールベースが3120mmもあるのに、フットワークが軽快でスポーツカーを走らせているような気分になれることは体験済みです。毎分約1万回 という素早さで前後輪の駆動力を緻密に制御している4MATIC+、そして最大3.6度の操舵が可能なリア・アクスルステアリングが効いているのでしょう。
その曲がりっぷりのよさは、飛ばすような走り方をしなくても存分に味わえます。全長4970mm、全幅1905mm、全高1495mmという車体が、その大きさを感じさせないどころか小さく感じられるくらいの身のこなし。リア・アクスルステアリングが装備されていることは言われなければわからないほど違和感のないフィーリングで、タイトコーナーが来ても難なくクルリと、車体を大きく傾かせることもなく、まるで自分を中心に世の中が回っているような感覚をともなって、実に綺麗に曲がってくれるのです。
基本、五合目までの道のりはほとんどが登り坂となるわけですが、言うまでもなくパワートレーンは余裕綽々。少し勾配が強くなったくらいではアクセルペダルをグッと踏み増しするような必要もなく、頼もしい力強さを保ったまま、静々と登っていきます。小さいことではあるのですが、そうした踏み増し、あるいはステアリングの微修正といった動作は、距離を走れば走るほど、ドライバーの疲れを増幅させるもの。でも、このクルマではそうした造作に神経を使う必要はほとんどありません。この日のドライブ疲れがほとんどなかったのは、走ったのが300km少々と短かったことももちろんあるのですが、何よりクルマの完成度が高かったことが一番の要因でしょう。
リアシートまわりまで広々とした4ドアセダンではあるけれど、これはまさしくグランツーリスモ。何かのはずみで窓を開けたら空気が心地良く、驚いたことに走りながら鳥のさえずりすら耳にすることのできた嬉しさに、なんてよくできたGTカーなのだろう、と感じたほどでした。